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■「伴侶動物との生活と死亡リスク」犬との生活が死亡リスクを抑制 国立環境研究所

2024-09-03 14:58 | 前の記事 | 次の記事

図 4年間の縦断研究の結果

国立環境研究所は、2024年8月22日、環境リスク・健康領域の谷口 優主任研究員らの研究チームが、オーストラリアの1万5000人以上を対象とした追跡研究から、伴侶動物の中でも犬との生活が人の死亡リスクを抑制していることを明らかにしたと発表した(参照:国立環境研究所 報道発表「伴侶動物との生活と死亡リスク 猫、鳥、魚ではなく犬との生活が死亡リスクを抑制」)。

動物が人にもたらす健康効果に関するエビデンスが蓄積され、人と動物が共生できる社会の仕組みづくりに貢献することが期待される。

研究の成果は、2024年8月14日付で学術誌「PLOS ONE」に発表された。

オーストラリア国民を代表する調査であるThe Household, Income and Labour Dynamics in Australiaの15,735名のデータを用いて、2018年の伴侶動物との生活状況や社会学的状況、身体的状況、心理的状況、社会的状況を収集。また、The National Death Index から2022年までの死亡情報を突合した。統計解析は、伴侶動物(犬、猫、鳥、魚、その他)別に、社会学的要因、身体的要因、心理的要因、社会的要因から算出した傾向性スコア(因果効果を推定するために用いられるバランス調整の統計手法)を用いた解析モデルにより全死亡発生リスクを算出。

4年間の縦断研究の結果(図)から、伴侶動物なし群に対する伴侶動物あり群の全死亡発生オッズ比は0.74(95%信頼区間0.59~0.93)であり、伴侶動物との生活が死亡のリスクを抑制することが示された。

伴侶動物の中で、犬飼育群のオッズ比は、伴侶動物なし群に対して0.77(95%信頼区間0.59~0.99)であり、犬飼育者がもつ社会学的要因、身体的要因、心理的要因、社会的要因の影響を考慮しても、犬との生活により死亡のリスクが23%抑制されることが明らかになった。これは、犬の世話を通じた運動習慣(身体活動量)の維持が、心血管疾患による死亡のリスクを抑制していると考えられる。

一方、猫、鳥、魚との生活では、オッズ比だけを見ると犬と同等、もしくはそれ以下の動物もあったが、いずれも飼育と死亡のリスクとの間に意味のある関係性(有意差)は見られなかった。その理由としては、これらの伴侶動物との生活による運動習慣への影響が小さいことが考えられる。