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■産業動物獣医療の将来を見据えるシンポジウムが行われる

2024-02-26 14:10 | 前の記事 | 次の記事

2024年2月に開催された令和5年度家畜診療等技術全国研究集会では、産業動物獣医療の将来を見据えたシンポジウム等が行われた。

まず、岩手大学名誉教授の佐藤 繁先生が「全国研究集会の歩み、そして臨床獣医師は未来を拓く」のテーマで講演し、次いでシンポジウム「産業動物における獣医療の将来」が行われた。シンポジストは矢吹悠久美先生(NOSAI北海道 ひがし統括センター 根室西部支所)、是枝明博先生(NOSAIひょうご 阪神家畜診療所)、遠矢良平先生(NOSAI宮崎 生産獣医療センター)の3先生で、座長は佐藤 繁先生が務めた。

佐藤先生はまず講演で、発表演題内容の変化の解析などを述べた。2010年以降は発表内容が多様化し、病態解析に関する演題が増加、2015年以降は症例や子牛に関する演題が増加し、2021年以降は臨床現場で直接役立つ知識や技術に関する演題は減少しているという。それらの背景について、家畜診療所への各種診断機器の普及や日本経済の長期低迷、東日本大震災、子牛価格の高騰、COVID-19感染症の流行、飼料価格の高騰、NOSAI制度の改正などの世相を反映しているのではないかと述べた。

佐藤先生は、「臨床現場での調査研究とその成果の普及」は臨床獣医師の問題意識と行動力にかかっており、その前提として、家畜診療所の安定した経営が必要であり、抜本的な経営改善、新事業の実施、職員の待遇改善や人材の育成などについて提言を述べた。

シンポジウムでは、まず矢吹悠久美先生が牛の全身麻酔への取り組みについて、次いで是枝明博先生が肉用牛の牛呼吸器病症候群(BRDC)削減の取り組みなどについて、そして遠矢良平先生が豚の群疾病マネジメントなどについて述べた。

NOSAI宮崎は群疾病マネジメントチームを結成して、生産獣医療で収益をあげており、フロアからもチームの作り方や運営の具体的な内容を問う質問が相次いだ。ひょうごNOSAIの疾病予防の取り組みも含め、チームで取り組む、NOSAI家畜診療所の新たな姿がみえるものであった。遠矢先生は「(家畜診療所の事業が)地域のインフラであり続けるために、診療以外の生産者のニーズに応えたい」と語った。また、主体である個体診療も全身麻酔の導入など従来の常識にとらわれない挑戦もみられた。矢吹先生は外科への取り組みについて、チャットで呼びかけを行っている状況で、「情報交換をもっとしたい」と訴えた。また是枝先生は全国各地の有志の獣医師、研究者による研究会「牛BRDC Frontiers」に所属し、情報交換を行っている。佐藤先生は、「共済制度に新たに認められた遠隔診療は獣医師同士のつながりにも活用できるのではないか」とアドバイスした。