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■犬の変性性脊髄症の撲滅に向けさらに前進 アニコム

2024-01-17 15:01 | 前の記事 | 次の記事

アニコム ホールディングス株式会社は、2024年1月9日、子会社のアニコム パフェ株式会社およびアニコム先進医療研究所株式会社が、犬の致死性の遺伝性疾患である変性性脊髄症(degenerative myelopathy:DM)の原因変異に対する研究を通じて、遺伝子検査の有用性を示唆する結果を得たと発表した。大規模な遺伝子検査の実施前後で原因変異の頻度が減少するとともに、原因変異を持たない個体や異なる系統の個体が繁殖に用いられるようになったことが明らかになった。

2023年12月18日、英国の学術誌「Genome Biology and Evolution」にオンライン公開された。

現在、犬では病気の原因となる遺伝子変異が数百種類も知られている。これらの遺伝子変異の蔓延を最小限に抑えるには、遺伝情報をもとにした繁殖管理が必要。そのため近年、ブリーダー自身が申込むことができるDTC遺伝子検査が普及し始めている。同社グループでもこうした「遺伝子検査サービス」を提供している。しかしながら、こうしたDTC遺伝子検査が犬の集団全体の遺伝構造に与える影響は、これまでわかっていなかった。

そこで日本のウェルシュ・コーギー・ペンブロークにおいて、DMの原因の一つである遺伝子変異(リスク変異)の頻度の変化を2016年から2022年まで経時的に調べるとともに、子犬の遺伝子検査が開始された2019年と直近の2022年の集団のゲノムを比較することで、犬の遺伝構造に対する遺伝子検査の影響を評価した。

まず、DMの原因の一つであるスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)の遺伝子変異(c.118G>A (p.E40K))について合計5,512頭を対象に遺伝子検査を行った。その結果、この変異をホモで持つ個体の頻度は2016年には46.0%(287頭中132頭)であったのに対し、2019年は14.5%(657頭中95頭)、2022年には2.9%(820頭中24頭)にまで減少していた。

次に2019年と2022年それぞれの、個体のゲノム全域の一塩基多型(SNP)に基づく集団分化解析により、SOD1上のイントロンにおいて、最も高い遺伝的分化指数(FST)を持つSNPが検出された。これにより、2019年と2022年の集団の間で、ゲノム全域で最も違いが大きい領域がSOD1上に存在すること、そしてc.118G>A(p.E40K)の変異に負の選択圧がかかっていたことが明らかになった。また、遺伝子検査の提供により、3年という短い期間でDMの遺伝的リスクを低減できたことが示された。

さらに詳細にSNP分析を行ったところ、2019年と2022年の集団の間で近親交配のレベルに変化は見られず、また、2019年には見られなかったリスク変異を持たない他の系統由来の犬が、2022年の集団に含まれていることが明らかになった。

これらの結果は、ブリーダーが遺伝子検査の情報を用い、DMリスクの低い個体を選択して交配させるとともに、近親交配を避けるために他の系統かつDMリスクの低い個体をブリーディングに用いてきたことを示唆している。