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日本獣医療倫理研究会(JAMLAS)第26回研究会(2023年10月15日、東京・京王プラザホテルにて開催)では、顧問弁護士の姫井葉子先生(春日法律事務所)、八東聖人先生(春日法律事務所)による「獣医療にかかる裁判例の紹介-エコー検査をすべきか否か カルテの訴訟における位置づけ等-」の講演が行われた。
カルテの詳細な記載が、裁判での動物病院側の勝訴の決め手となった判例が紹介された。原告の飼い主の主張がカルテと食い違っていたが、裁判所は「カルテの記載は事実であると推認される」との判断を行った。姫井先生は、法律上、作成が義務付けられているカルテについて「診療録は記憶の缶詰」と言われていると紹介し、それだけに正確な記載が必要と述べた。
今回の事例のカルテの記載について、主訴の欄が設けられておりそこに飼い主の発言が明確に記載されていたこと、改善しなかった場合の対応を含め見通しのことが記載されていたこと、通院ごとに体重、元気・食欲の有無が明記されていたことが良かったとのこと。それらにより原告の主張が事実と異なると判断された。
また、料金、確定診断、転医のことはトラブルになりやすく、診療費が特に高額の場合のやりとり、確定診断ができず経過治療を行っていることについてのやりとり、転医の際の双方の発言を記録しておいたほうがよいとアドバイスされた。カルテを訂正する場合は、元の記載が分かるようにしておくことが、紙であろうと電子であろうと重要。修正液の使用などは改ざんとみなされ、カルテの信用を失ってしまう。
カルテの交付を求められた際の対応についても紹介された。求められた場合は断ることはできない、手数料や送付料は事前に求めてよい、無理な日程の開示要求には応じる必要はないとのこと。