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■DNAメタバーコーディング技術の応用 地上と地下の生態系をつなぐ食物網の季節動態を解明

2023-08-18 17:02 | 前の記事 | 次の記事

クモを中心とする食物網構造の季節変動(概念図)。Copyright:きのしたちひろ

京都大学生態学研究センター 鈴木紗也華 元博士課程学生と東樹宏和 同准教授 および 馬場友希 農業・食品産業技術総合研究機構上級研究員らの研究グループは、2023年7月14日、生物多様性を網羅的に解明する「DNAメタバーコーディング」技術を応用し、50種のクモと約1,000種の餌生物が織りなす食物網の構造とその動態を解明したと発表した。

他の生物を捕食する生物の体内には、餌種のDNAが含まれている。同プロジェクトでは、早春から晩秋の草原生態系を対象とした野外調査で2,000個体以上のクモを採集し、その全個体の餌種DNAをターゲットにした分析を実施。その上で、食物網の構造をネットワーク科学の観点から解析した。

その結果、食物網の構造が季節の移り変わりとともに劇的に変化している様子を捉えることに成功した。検出された約1,000種の餌種の中には、植物の葉を食べる昆虫や地下の有機物を食べるトビムシ類、他の節足動物を餌とする捕食者や寄生者が含まれていた。こうした多様な餌を捕食し、地上と地下の生態系間をつなぐ役割を果たしているクモを探索したところ、季節の変化とともに「食う-食われる」関係のネットワーク内で中核に位置する種(「コア生物種」)が入れ替わっていることが明らかになった。

肉眼観察だけでは捉えきれない生物種間の関係性を一挙に解明する同研究のアプローチを今後拡大することで、生態系内でどのように物質が循環しているのか、生態系の機能と安定性に「コア生物種」がどのように寄与するのか、といった核心的な問いに答える基礎が構築されると期待される。