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■「猫のWell-Beingを考える 啓発イベント」を実施 日本全薬工業株式会社

2023-08-10 17:32 | 前の記事 | 次の記事

左より福井俊吾先生、佐藤愛実先生、東山 哲先生

日本全薬工業株式会社(ゼノアック)は、2023年8月8日「世界猫の日」に「猫のWell-Beingを考える 啓発イベント」を開催し、その概要を発表した。イベントは、猫と飼い主にとってWell-Beingな社会を実現する取り組みの一環として、JSFMねこ医学会(会長・学術理事 石田卓夫先生、以下、JSFM)の協力のもと行われた。

ひがしやま動物病院 院長の東山 哲先生(JSFM副会長、CFC理事)、三鷹獣医科グループ 猫内科部長の佐藤愛実先生(JSFM実行委員)が登壇し、猫が健康で幸せである状態、さらにその状態によって飼い主も幸せである、猫と飼い主にとってWell-Beingな社会とは何か、などについてのトークセッションが行われた。

また、ゼノアックは猫のWell-Being実現のために、バイオ医薬品の開発に力を入れるとともに、最近では猫の腎性貧血の新薬研究に取り組んだ背景について解説した。

トークセッションの概要を紹介する(敬称略)。トークセッションのファシリテーターは、ゼノアックCA販売戦略部 CAテクニカルサービスCAテクニカルサービスチームリーダーの福井俊吾先生(獣医師)。

1.猫の来院率が少ない背景

  • 福井:先生方にまずお聞きしたいのは、猫の予防・来院件数が進まないのは何が原因なのかというテーマです。臨床の現場から見て、どこに原因があるとお考えでしょうか。
  • 東山:犬の場合は、飼い主が毎年1回予防注射をしないといけない狂犬病予防法があるのが来院のいちばんの理由になっているかと思います。また、犬は散歩でノミが付いたり、蚊に刺されてフィラリア症にかかったりすることがあり、予防が必要ということで来院回数が多くなるのに対し、猫は病気にならないと行かない、ということが多いのではないでしょうか。
  • 佐藤:病気にならないと病院に行かないということもありますが、更に飼い主がちょっとおかしいと感じたとしても、それでもなお、行かないことが多いです。猫は病院が嫌いと思い込みがあったり、もしくは1回病院に連れて行ったときに猫が嫌がり、飼い主も嫌な思いをしてやめてしまう方が多いことが、原因かと思います。

2.キャットフレンドリーの考え方

  • 福井:猫は飼い主が動物病院に連れて行くまでにハードルがありますが、その距離を縮めていくためにどういったポイントがあるのでしょうか。ねこ医学会やキャットフレンドリーについてご紹介いただけますか。
  • 東山:キャットフレンドリーという概念は10年程前に海外のねこ医学会で、猫の体、心理、猫の飼い主のことまでよく知ることで、猫にも良い医療を提供することができるのではないかという考えのもと立ち上げられたプログラムです。その中で、キャットフレンドリークリニックという世界標準を作り、それに満たす病院をゴールド・シルバー・ブロンズと認定し、飼い主から猫の診療・猫のストレスに配慮していることが分かりやすくするためのプログラムがあります。国内のねこ医学会でも正しく理解いただき、取得していただけるようにお手伝いをしています。
  • 福井:近隣の病院とキャットフレンドリーを意識している動物病院の違いはどういったところがあるでしょうか。
  • 佐藤:必ずしもキャットフレンドリーを取得している病院ではないといけないわけではなく、猫専門の診療時間を作っているところやSNSでのアピールがある病院、電話で相談した際に猫に向き合っていることが分かる病院が良いのではないでしょうか。
  • 福井:来院前に電話で相談してもよいのでしょうか。
  • 東山:キャットフレンドリーな病院としてはもちろんウェルカムです。実は猫が一番通院でストレスを感じるのはキャリーに入る時点なので、キャリーの選び方やキャリーの慣れさせ方、キャリーへの入れ方なども電話で相談してください。
  • 福井:猫を飼い始めた方はどのように正しい情報収集をすれば良いでしょうか。
  • 佐藤:飼い主だけで病院に行くことも可能になっており、飼い方や年代ごとに気を付けるべきことを説明してもらえます。幸せに暮らしていけるように計画を立てていくことを心掛けるのが良いと思います。

3.慢性腎臓病の早期発見の重要性

  • 福井:猫の死因の上位には腎臓病、特に慢性腎臓病がありますが、慢性腎臓病に対して気を付けるべきことは何でしょうか。
  • 東山:慢性腎臓病はいろいろな原因が重なり、腎機能が落ちて発症してしまうものであるため、若いうちから気を付ける必要があります。年代ごとの健康診断でひっかかってしまった場合は、さらに詳しい検査をして、腎臓病の治療戦略を練る必要があります。
  • 佐藤:尿石症に関しては水分をできるだけとることで防ぐことができます。定期健診で早期発見をできるようにすることが重要だと思います。
  • 東山:動物医薬業界の動きとして、猫の慢性腎臓病の治療薬の研究が進んでいると聞いていますが、ゼノアックさんでもそうした動きはあるのですか。
  • 福井:弊社でもバイオ創薬に注力し、猫の腎性貧血治療薬の研究を終えてこの夏に承認がおりた製品があります。猫のWell-beingにもさらに貢献できるようになります。

4.猫のWell-beingを進めていくうえで大切なこと、それによって飼い主にももたらされるWell-beingとは

  • 福井:猫のWell-beingと猫を動物病院に連れていくことは切っても切れない関係だとお話を伺って感じましたが、先生方が考える「猫のWell-being」を教えてください。さらに猫のWell-beingと飼い主のWell-beingの関係についても教えてください。
  • 佐藤:猫のWell-beingは健康寿命を延ばすことが獣医師の役割として大切と思いますが、それだけでなく家でどれだけニーズを満たされた楽しい生活をできるか、ただ病院に行くだけでなく、快適な病院に快適に連れて行くことで精神面に負担がないかが重要かと思います。飼い主のWell-beingについては、病気の発見が遅れて猫が辛い思いをしないよう、猫を大切にすることで飼い主のWell-beingも高めていけるのではないでしょうか。
  • 東山:飼い主は猫のすべてを理解しているわけではないため、インターネットだけでなく一匹一匹に合わせた猫の飼育方法や治療のご提案ができればと思います。動物病院と良い関係を築けるように、探して・付き合って、猫・飼い主・動物病院のスタッフとしてもWell-beingになるのではないでしょうか。