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■新刊『ヒト、イヌと語る コーディーとKの物語』

2023-05-22 13:10 | 前の記事 | 次の記事

『ヒト、イヌと語る コーディーとKの物語』

著者は麻布大学獣医学部介在動物学研究室の菊水健史先生、永澤美保先生である。

「まえがき」には、東京大学出版会の編集者である光明さんより「飼い主の視点での1冊を」と要望されて企画がはじまったと書かれている。

内容は、菊水先生の飼っていたスタンダードプードルのコーディーの語りから始まる。次いで、語られたことに関わる解説やエッセイが続く。語りではコーディーの気持ちが綴られるのだが、当然想像である。しかし、この両先生による執筆である。とても説得力があり、専門家の目線の細かさと幅広さに感心する。続く解説では、科学に基づいたことを学べるようになっている。なお、コーディーの語りと解説・エッセイは書体を変えた体裁で、一目で区別がつくようになっている。

コーディーの語りからは、イヌは飼い主が好きで、寄り添っていたいことが伝わってくる。それは真実に違いないだろう。犬の流儀ということもよく出てくる。その流儀を学ぶことは、イヌとの距離の置き方の指南にもなっている。また、コーディーの語り部分の人物名がアルファベット一文字で表現されている(KやNなど)。そのことでコーディーからみたニンゲンの認識の仕方が、より真実味を帯びてくる。終盤、死期が近づくコーディーは自分の見た夢を語るのだが、その夢でイヌとニンゲンの出会いが表現され、その内容は壮大でロマンチックである。

飼い主の視点、そしてそれを越えたイヌの視点も合わさった、最良、最強の飼い主コンビによる、小説+エッセイの読み物として仕上がっている。イヌに、特に大型のイヌに寄り添ってもらうととても幸せだろうなと、読み終わって強く感じた。

(記:松本 晶)

§目次

  • まえがき(菊水健史)
  • 第1章 はじまり
  • 誕生前夜
  • 誕生
  • きょうだい
  • 第2章 成長
  • 開眼
  • 探検
  • 離乳
  • お出かけ
  • 第3章 新しい世界へ
  • 新しい家
  • 色・音・におい
  • おやつのゆくえ
  • 目じるし
  • 仲間
  • 第4章 イヌの世界
  • 家族
  • 再会
  • 群れ
  • リーダー
  • 同調
  • 第5章 ヒトとイヌ
  • 指さし
  • 自分
  • 真似
  • 協力
  • 第6章 絆の形成
  • お別れ
  • お留守番
  • おかえりとただいま
  • 第7章 おわり
  • 老い
  • 進化
  • 不安
  • 出会い
  • 寄り添い
  • 共生
  • 最後の夜
  • あとがき-その後のできごと(永澤美保)