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- 菊水健史、永澤美保 著
- 四六判・192ページ
- 定価2,420円(本体2,200円+税)
- 2023年2月・東京大学出版会発行
- 詳細:https://www.utp.or.jp/book/b618265.html
著者は麻布大学獣医学部介在動物学研究室の菊水健史先生、永澤美保先生である。
「まえがき」には、東京大学出版会の編集者である光明さんより「飼い主の視点での1冊を」と要望されて企画がはじまったと書かれている。
内容は、菊水先生の飼っていたスタンダードプードルのコーディーの語りから始まる。次いで、語られたことに関わる解説やエッセイが続く。語りではコーディーの気持ちが綴られるのだが、当然想像である。しかし、この両先生による執筆である。とても説得力があり、専門家の目線の細かさと幅広さに感心する。続く解説では、科学に基づいたことを学べるようになっている。なお、コーディーの語りと解説・エッセイは書体を変えた体裁で、一目で区別がつくようになっている。
コーディーの語りからは、イヌは飼い主が好きで、寄り添っていたいことが伝わってくる。それは真実に違いないだろう。犬の流儀ということもよく出てくる。その流儀を学ぶことは、イヌとの距離の置き方の指南にもなっている。また、コーディーの語り部分の人物名がアルファベット一文字で表現されている(KやNなど)。そのことでコーディーからみたニンゲンの認識の仕方が、より真実味を帯びてくる。終盤、死期が近づくコーディーは自分の見た夢を語るのだが、その夢でイヌとニンゲンの出会いが表現され、その内容は壮大でロマンチックである。
飼い主の視点、そしてそれを越えたイヌの視点も合わさった、最良、最強の飼い主コンビによる、小説+エッセイの読み物として仕上がっている。イヌに、特に大型のイヌに寄り添ってもらうととても幸せだろうなと、読み終わって強く感じた。
(記:松本 晶)
§目次
- まえがき(菊水健史)
- 第1章 はじまり
- 誕生前夜
- 誕生
- きょうだい
- 第2章 成長
- 開眼
- 探検
- 離乳
- お出かけ
- 第3章 新しい世界へ
- 新しい家
- 色・音・におい
- おやつのゆくえ
- 目じるし
- 仲間
- 第4章 イヌの世界
- 家族
- 再会
- 群れ
- リーダー
- 同調
- 第5章 ヒトとイヌ
- 指さし
- 声
- 顔
- 自分
- 真似
- 敵
- 協力
- 第6章 絆の形成
- お別れ
- お留守番
- おかえりとただいま
- 第7章 おわり
- 老い
- 進化
- 不安
- 出会い
- 寄り添い
- 共生
- 最後の夜
- あとがき-その後のできごと(永澤美保)