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共立製薬株式会社と東北大学大学院農学研究科は、2023年4月1日、同研究科に「動物粘膜免疫学共同研究講座」を設置した。抗菌物質のみに頼らない家畜・家禽・養魚の粘膜感染症制御実現をめざす。
東北大学の動物粘膜免疫学を専門とする教授1名、助教1名、特任助教1名、そして客員教授として共立製薬株式会社の社員1名が所属し、家畜・家禽・養魚の粘膜組織に備わる免疫機能を向上させるための素材(例:微生物・代謝物)の開発に着手する。
産業動物は、特に幼若期に高頻度で感染症を発症する。また、その多くは、消化器や呼吸器といった粘膜組織で発症する粘膜感染症(例:下痢症、肺炎)であることが知られている。動物の粘膜組織には、特有の免疫システム(粘膜免疫)が発達しており、粘膜感染症を引き起こす病原ウイルス・細菌を排除するための重要な役割を有している。
新たに設置された講座では、動物の粘膜免疫の機能強化を可能にすることで、動物の粘膜感染症に対する効果的な予防・治療法を確立する。また、その実用化に向けた取り組みを、大学―企業―現場の三者が一体となって加速させるために、千葉県農業共済組合と連携し、現場に即した研究開発に取り組む。
§講座概要
- 研究題目:動物粘膜免疫学研究
- 設置期間:2023年4月1日~2026年3月31日
- 研究目的:家畜・家禽・養魚の感染症制御を目的とした抗菌物質のみに頼らない素材の開発とその実用化
- 研究内容:同講座がいち早く実用化を目指す、子牛の下痢症治療を目的とした有用微生物移植は、健康な子牛(ドナー)の腸内微生物を、下痢症を発症する子牛(レシピエント)に移植することで、疾病の治癒を可能にする技術。東北大学は、千葉県農業共済組合とともに実施したフィールド試験を通して、有用微生物移植による子牛の下痢症治癒効果を実証、さらには、有用微生物移植により腸内の免疫・微生物・栄養代謝環境の安定化が可能になる科学的エビデンスを取得することに成功してきた。この有用微生物移植を日本全土に普及させるべく、子牛の下痢症制御を目的とした有用微生物カクテルを開発する。