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■「イノシシを捕獲すると被害はどう変わる?」イノシシ対策のインパクトレポートを公開 株式会社うぃるこ

2023-03-14 15:38 | 前の記事 | 次の記事

実証事業で捕獲された140kgの個体

大積エリアの様子

うぃるこのメンバー。代表取締役の山本麻希さんは長岡技術科学大学の准教授として教鞭をとる傍ら、長年にわたって地域の獣害対策に現場目線でコミットする実務家の側面を持ち、科学的アプローチと現場力を強みとしている。また取締役の鬼澤知裕さん(公認会計士)は日本評価学会認定評価士の資格を有しており、インパクト評価という手法を用いて社会的変化を可視化する技術で「インパクトレポート」を取りまとめた。捕獲の現場責任者である塚田朱花さんは日本最高峰の技術を持つ佐賀の和田三生さんに師事し、唯一無二の捕獲技術を有する捕獲の専門家として活躍している。

株式会社うぃるこは、2023年3月8日、イノシシの捕獲・出没と農業被害との関係に着目し、イノシシの選択的捕獲が与える中期的な影響を検証した「インパクトレポート」を公開した。同社は野生動物による被害の対策を支援するソーシャルベンチャー。レポートには捕獲コストやシステム利用、現場で得たノウハウや課題などイノシシ被害に悩む全国の自治体にとって参考となるリアルな情報を盛り込んでいる。

野生動物による農作物被害額は2010年度の239億円をピークに減少傾向であるが、2021年度の被害額は155億円と依然として高い水準。特にイノシシは、他の大型哺乳類に比べ行動範囲が比較的狭いが高い繁殖力を有し、生息域は2018年度までの40年間で約1.9倍に拡大している。

同社は、繁殖力の高いイノシシによる農作物被害を防ぐためには被害を出す個体を、また生息個体数を減らすためにはウリ坊を多く産む雌の成獣を狙って捕獲することが重要という仮説を立て、これらの個体を選択的に捕獲した際の被害状況や生息個体数といった社会的変化(インパクト)を可視化するための実証事業を行った。

新潟県長岡市の大積エリアで、2020年の夏~冬にかけて集中的に捕獲を実施し、その後1年間における出没や被害状況をモニタリングした。同エリアを介入エリア(捕獲を実施するエリア)と非介入エリア(捕獲を行わないエリア)に分けてモニタリングすることで捕獲行為の純粋な効果を把握しつつ、イノシシのエリア間での移動状況も分析。

介入エリアにおける成獣の推定頭数35頭、目標捕獲頭数25頭に対して約32%にあたる8頭を捕獲し、同事業とは関係のない猟友会がさらに6頭を捕獲。観察されたインパクトとして、介入エリアの獣道は42.8%の減少、農地周辺の掘り返し跡は14.2%の増加、住民の被害感情は若干の減少、介入エリアでの成獣の推定頭数は8%減少した。

成獣の選択的な捕獲により加害するイノシシの群の単位は減少したものの、隣接する山地エリアのイノシシが農地に降りてきたため被害減少は限定的であった。被害減少のためには、(1)継続的な捕獲により加害個体を減らし続けること、また(2)捕獲に加えて電気柵等の他の防除施策を組み合わせる必要があることと結論付けている。

レポートは単なる事業報告ではなく、野生動物被害に悩む全国の自治体にとって参考となる情報、具体的には工数やコスト、効果的な捕獲や錯誤捕獲対策のコツ、ICT技術の導入方法などを公開している。また現場担当者ができなかったことや苦労したことも赤裸々に掲載している。

§株式会社うぃるこからのメッセージ

小さい会社ながら独自の強みを持つメンバーで構成され、全国の獣害対策を支援するコンサルティング会社として活動しています。捕獲指導のみならず、生態調査、自治体職員向け・住民向け研修会、電気柵の設置指導など獣害対策をトータルにご提案可能です。事業拡大に伴って新しいメンバーも絶賛募集中です。2023年4月中旬頃まで公募を行っているので、「野生動物との共存」というビジョンに興味のある方は是非弊社ホームページから問い合わせください。