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『牛のマタニティハンドブック』
三宅陽一（繁殖サポート・サービス）
令和4年秋に、文永堂出版から『牛のマタニティハンドブック』と題する専門書が発刊された。この10数年、家畜の繁殖生理学に関する研究活動の進展、繁殖成績を向上させるための様々な技術の開発・薬剤の応用などの努力が積み重ねられてきた。しかし残念ながら、これらの成果を1冊の書籍として取りまとめたものは最近出版されてはいない。
内容は、(1)妊娠に至る受胎のプロセス、(2)妊娠1か月の変化と特徴（1日～1か月）、(3)妊娠初期の変化と特徴（1～3か月）、(4)妊娠中期の変化と特徴（3～7か月）、(5)妊娠後期の変化と特徴（7～9か月）、(6)分娩期の特徴と管理、(7)産後のケア、(8)ワクチンプログラムである。執筆者は獣医学・家畜生産関連の諸先生、生産現場で臨床繁殖の診療に携わっておられる獣医師諸兄によるものだ。
『牛のマタニティハンドブック』は近年の牛の繁殖生理学に関する知見の集大成であり、産業動物の臨床現場で得られた豊富な診療経験が展開されている。また、牛の生産性・受胎率向上に資する様々な診療技術および各種薬剤の応用方法・飼養管理に関する紹介は刮目に値するものとなっている。
この本は、多くの臨床獣医師が臨床現場で必要・重要な臨床繁殖上の諸検査、生産性を阻害する繁殖障害の防除・治療に不可欠な技法の習得の参考となるだろう。また、牛の受胎率向上に励んでいる人工授精師や、関係機関諸氏の貴重な参考書として利用されるよう期待している。
§担当編集者の追記
本書は三宅陽一先生から、『日めくりマタニティブック』の牛版をつくりたいと声をかけていただいたことに始まります。最初に頭に浮かんだものは同書にあるような子宮内の胎子のカラー写真が牛で存在するのだろうかでした。そして三宅先生の希望もあり、大澤先生を交えて企画が成り立つのか討議をいただいた上でスタートしました。
牛の場合は体外での胎子の写真があり、また現場では、超音波検査が普及しています。寄せられた原稿には画像が多く含まれ、不安は払拭。多くの胎子写真、超音波画像、そして妊娠中の母牛の体内のホルモン動態のみならず、外貌、体重、体型の変化を収載し、胎内の写真を掲載することは無理でしたが、引けを取らない1冊となりました。
貴重なデータをもとに原稿を執筆いただいた先生方、見事に全体調整をはかっていただいた編集担当の先生方に感謝を申し上げます。（松本 晶）