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農研機構は、2022年10月21日、住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社との共同研究で、鶏を加害するワクモの共生細菌群を解明したと発表した(https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/155209.html)。
研究成果発表論文
「Genetic Variations and Microbiome of the Poultry Red Mite Dermanyssus gallinae」
Yudai Nishide,Takafumi N.Sugimoto,Kenji Watanabe,Hiroshi Egami,Daisuke
ワクモは鶏を吸血することにより、鶏卵生産量の減少などの被害をもたらすダニの一種。その駆除に使用する殺虫剤への抵抗性発達が問題となっている。動物の血液を吸う害虫の多くは共生細菌を体内に持ち、この共生細菌を失うと生存できなくなる。
農研機構と住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社の研究グループは、ワクモの共生細菌群を解析し、駆除剤の作用点となり得る共生細菌を特定した。この成果により、共生細菌除去に有効な薬剤探索を進めることにより、既存殺虫剤とは異なる作用機序を持つワクモ駆除剤の開発が期待される。
動物の血液には吸血害虫の成育に必須なビタミン類が不足しており、必須共生細菌からビタミンの供給を受けないと生存できない。このため、ワクモの体内から必須共生細菌が失われるとワクモは成育できずに死滅することが推測される。ワクモの必須共生細菌は、ヨーロッパのワクモを用いた研究で、必須共生細菌の候補となる種がいくつか示されたが、特定されていなかった。国内のワクモにおいては、全く不明であった。
今回の研究は、日本16道県の18養鶏場(各養鶏場8羽ずつ、計144個体)から収集したワクモの共生細菌群を同定し、共生細菌群を比較解析することにより、全地域のワクモ個体に共通する共生細菌が存在することを明らかにしたもの。この共生細菌はワクモの生存に必須である必須共生細菌の可能性が高い。今後、この共生細菌の生存・増殖を抑制する化学薬剤の探索を進める。