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■タヌキ、キツネ、アナグマの生息分布調査の結果

2022-10-27 12:13 | 前の記事 | 次の記事

環境省は、2022年9月30日、タヌキ、キツネ、アナグマの生息分布調査の結果を公表した(「令和3年度(2021年度)中大型哺乳類分布調査 調査報告書タヌキ・キツネ・アナグマ」)。

タヌキ、キツネ、アナグマは、行動圏が人間の生活圏と重なり合う部分が多く、人間活動との関わりが深い種。1970年代と2000年代に全国規模での生息状況の調査が行われている。

環境省生物多様性センターでは、2018年~2021年度にタヌキ、キツネ、アナグマを対象に、その分布に関する知見を有する有識者8名で構成される検討会(座長:三浦慎悟 早稲田大学 人間科学部 名誉教授)を設置し、現在の生息状況を把握するための調査・検討を行った。

2010年度~2021年度の過去約10年間を調査対象期間とした。各都道府県による既存調査の情報に基づき、環境省で集約した調査結果や、研究者による既存文献等から生息情報を収集。加えて、全国の市町村に対するアンケート調査、各都道府県担当者や専門家に対する聞き取り調査を実施した。また、地域の研究団体からの情報、環境省生物多様性センターが運営する「いきものログ」を通じた一般市民の方からの情報も収集した。収集・整理した情報源に基づく分布図の作成後、都道府県や生息状況に詳しい専門家等へのヒアリングを実施し、生息情報の精査や必要な情報の補完を行った。

  1. タヌキ
    •  沖縄県を除く広い範囲で生息情報が得られた。北海道の中央部の大雪山系や日高山脈、宗谷地方などで生息情報が得られなかった地域があることや、本州の奥羽山系の脊梁部や北アルプスでは生息情報が少ないことがわかった。2000年代調査結果との比較では、東京都、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府といった大都市圏とその周辺での分布拡大の傾向がみられた。
  2. キツネ
    •  沖縄県を除く広い範囲で生息情報が得られたが、北海道では特に日高山脈周辺に生息情報が得られなかった地域が存在した。東北から中部にかけては、まばらであるが広く生息情報が得られた。和歌山県、山口県、四国西部、宮崎県では得られた生息情報が少ない傾向があった。2000年代の調査結果との比較では、千葉県房総半島、愛知県西部、鹿児島県で多くの生息情報が得られた。千葉県と鹿児島県で生息情報が多く得られたのは、狩猟者を対象に実施された出合調査の結果が反映されたためと考えられる。山口県、四国西部、宮崎県で生息情報が得られなかったメッシュが目立ち、情報不足の可能性が考えられた。また、和歌山県でも生息情報が得られなかったメッシュが目立った。その明確な原因はわからないが、県のレッドリストへの掲載が検討されているようにキツネの分布が減少している可能性がある。
  3. アナグマ
    •  北海道、沖縄県を除く広い範囲で生息情報が得られた。特に九州はほぼ全域で連続的に生息情報が得られ、近年増加している農業被害防止目的の捕獲情報が反映されたことが一因と考えられた。2000年代の調査の結果との比較では、近畿や九州、首都圏周辺での分布拡大傾向がみられた。栃木県においては、調査期間において狩猟による捕獲が禁止されていたが、県が実施した狩猟者へのアンケート実施結果が活用できたことで、生息情報を収集することができた。