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■2021年シーズン国内発生高病原性鳥インフルエンザウイルスの特徴

2022-10-05 13:01 | 前の記事 | 次の記事

HA分節の遺伝子系統樹解析に基づくH5N8亜型およびH5N1亜型高病原性鳥インフルエンザウイルスの分類と家禽での発生時期。HAおよびNA遺伝子分節の組み合わせによりH5N8亜型およびH5N1亜型に分類され、さらにH5N1亜型HPAIVはHA遺伝子の由来により2グループに分類される。

国内の家禽および一部の野鳥から検出されたウイルスのHA遺伝子解析分類による道県別分布図。家禽での発生は北海道から鹿児島県まで認められ、3グループのウイルスが分離されている。一部の野鳥においても家禽で認められた2グループのウイルスが分離されている。

農研機構は、2022年9月20日、2021年シーズン国内発生高病原性鳥インフルエンザウイルスの特徴について研究結果を発表した。2021年11月10日から2022年5月14日まで国内の家禽飼養施設で確認されたH5亜型高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAIV)の遺伝子および病原性解析を行ったもの。

2021年シーズンは、H5N8亜型(2事例)とH5N1亜型(23事例)、2つの亜型のウイルスが存在し、赤血球凝集素(HA)遺伝子の特徴から3つのグループのウイルスが同一期間中に国内に侵入していたことが分かった。これらのグループのウイルスはいずれも鶏に高い致死性を示すが、感染性や伝播性はグループ間で異なっていた。同シーズンの発生はこれまでで最も長期間継続し、複数グループのウイルスの侵入がみられたことから、農場へのウイルス侵入機会も一層増加していたものと考えられる。

25事例の発生から分離されたHPAIVの全ゲノム配列を解読し、赤血球凝集素(HA)遺伝子分節について系統樹解析を行った結果、H5N8亜型HPAIVは「2020-2021年冬季アジア分離HPAIV(20A)」、H5N1亜型HPAIVは「2020-2021年冬季欧州分離HPAIV(20E)」または「2021-2022年欧州分離HPAIV(21E)」と近縁であり、20A、20Eおよび21Eの3グループのウイルスが同一期間中に国内に侵入していた。また、全てのウイルスの推定アミノ酸配列には、既存の抗ウイルス薬への耐性や哺乳類への感染性を増大させる変異は認められなかった。

家禽で分離されたウイルスの亜型・グループとそれらの発生時期との関連をみると、11月の上中旬にH5N8亜型の20Aが秋田県と鹿児島県、中旬にH5N1亜型の20Eが鹿児島県で検出され、これら2種類のグループによる発生がほぼ同時期に起こった。20Aによる発生は11月の2例のみにとどまり、一方20Eは11月から2022年1月および5月に検出され、同シーズンは、20Eによる発生数が最も多く地理的な偏りはなかった。21Eは、2022年2月中旬から5月中旬まで検出され、その発生は北海道と東北地方に限られた。北海道、青森県、秋田県および鹿児島県では、複数のグループのウイルスが家禽での発生に関与していた。野鳥または環境検体からも同期間の11月8日~5月14日に、一部の検体から20Aおよび21EグループのH5亜型HPAIVが検出されている。

分類された3グループのウイルス、H5N8亜型の秋田株(20A)、H5N1亜型の鹿児島株(20E)および岩手株(21E)について、国際獣疫事務局が定める鶏への静脈内接種試験を行ったところ、高病原性であることを規定する75%の致死率を超えて、100%の致死率を示した。また、これら3つの株について自然感染経路を想定して経鼻接種試験を行ったところ、感染した鶏には沈うつ、一部の鶏では顕著な肉冠のチアノーゼや神経徴候が認められた。経鼻接種試験の結果、(1)感染致死性は最大で8倍程度の差であること、(2)全羽が感染して死亡したウイルス量の接種鶏の平均死亡日数は、最短2.2日から最長3.5日とその差は1.3日であること、(3)各ウイルスを接種した1羽の鶏から同居した6羽の鶏への伝播性は33.3~100%であることから、3グループのウイルス株間で感染性や伝播性が異なっていた。