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■自給濃厚飼料としてのイアコーンサイレージ

2022-06-01 12:11 | 前の記事 | 次の記事

トウモロコシの利用方法(記者発表資料より)

コーンサイレージの種類とハーベスタ

農研機構 北海道農業研究センター 寒地酪農研究領域自給飼料生産グループ 上級研究員の根本英子先生は、2022年4月27日、北海道での「自給濃厚飼料としてのイアコーンサイレージ生産利用」実証実験の概要について、オンラインで記者に向けて発表した。「自給濃厚飼料としてのイアコーンサイレージ生産利用」は、農林水産省が2022年1月に公表した「みどりの食料システム戦略」技術カタログの1つ。

イアコーン(トウモロコシの雌穂)サイレージは、トウモロコシの子実+芯+穂皮をサイレージにしたもの。子実+芯+穂皮+茎葉を使用した粗飼料であるホールクロップサイレージと異なり、イアコーンサイレージは濃厚飼料である。現在、欧米で利用されている。飼料用トウモロコシの世界一の輸入国である日本にとって、牛用の濃厚飼料の自給率を上げることも重要である。

新しい作物を導入するに当たっては、省力的な作物、収入が見込める作物であり、かつ+αのインセンティブがあることが重要。飼料用トウモロコシは投下労働時間が少なく、管理作業も少ないと実証されている。また、残された茎葉などの収穫残渣を鋤き込むことで、畑地土壌の物理性の改善が期待できる。

耕畜の連携で、畜産農家にとっては圃場・労働力の不足解消、敷料確保、家畜排泄物の散布場所の確保が期待でき、耕種農家にとっては新たな作物生産、適正な輪作、化学肥料に代わるものとして畜産農家からの堆肥の入手などが期待できる。

ラップサイロで調整したイアコーンサイレージは発酵品質に優れ1年保存が可能。泌乳牛の嗜好性は圧ぺんトウモロコシと同定度以上で、その他の家畜の嗜好性もよい。夏場でも採食量が落ちにくく、結果として乳量が落ちにくいことや繁殖成績の向上につながる結果も出ている。生産牛乳は乳中香気成分(ラクトン類)の含量が高く「おいしい」との評価も出た。

根本先生は現状を以下のようにまとめ、今後の課題として分離給与技術の開発、ロールベール以外の調整保存方法の開発が必要と述べた。

§まとめ

  • イアコーンサイレージに耕畜連携で取り組むことで、持続可能な農業の可能性がある。
  • 夏季の採食量減少を抑制し、その結果、乳量減少を緩和する。
  • 消費者から好まれる牛乳が生産できる。
  • イアコーンサイレージの生産費は44.5~54.5円/TDN1kgで、輸入圧ぺんトウモロコシの52.4円/TDN1kgと同程度以下である。
  • イアコーンサイレージの低コスト化と良好な嗜好性によって、酪農家の収益性改善が期待できる。