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■腎不全猫へのAIMの治療効果の臨床試験 AIM医学研究所とエルムスユナイテッド動物病院グループが共同研究

2022-05-24 15:02 | 前の記事 | 次の記事

宮崎 徹先生

荒川弘之先生

一般社団法人AIM医学研究所(Webサイトリニューアル中)と株式会社エルムスユナイテッド動物病院グループは、2022年4月1日、腎不全猫への血中蛋白質「AIM」の治療的効果を確認する臨床的な学術研究に関する共同研究を開始した。研究期間は1年。

エルムスユナイテッド動物病院グループでは同研究の対象とするステージにある慢性腎臓病治療中の猫の症例に対して、飼い主の同意が得られた場合、AIM蛋白質投与の治療効果を6か月間確認する。データの解析は両機関が共同で行う予定。エルムスユナイテッド動物病院グループは今回の共同研究の開始に伴い、全動物病院に猫専科と、AIMを活用した臨床研究と臨床情報を蓄積する猫専科病院を新たに設立することを計画している。

宮崎 徹先生は血中蛋白質のAIM(apoptosis inhibitor of macrophage)を発見し1999年に論文発表した。東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センターに教授として在籍中の2016年に、AIMが尿細管の管腔に蓄積した死細胞を除去することにより急性腎障害の治癒を促進する要旨の論文をNature Medicine誌に発表。さらに猫の腎臓病の発症率が突出して高い重要な原因はAIMが先天的に機能していないことをScientific Reports誌に発表。これらの成果を元に、猫の腎臓病を標的としAIMの医薬品としての開発を開始したが、コロナ禍の影響を受け、創薬開発の停滞を余儀なくされた。苦境が2021年7月にメディアで伝えられると、東京大学に2億円超の寄附が集まった。最愛の猫を腎臓病で亡くした方や、自身や家族が腎臓病で苦しむ方からの寄付も多く、治療薬の完成を心待ちにしている旨のコメントが数多く寄せられた。そして宮崎先生は2022年3月末をもって東京大学を離れ、IAMの代表理事・所長に就任しAIM医薬品の開発研究に専念することになった。

§一般社団法人AIM医学研究所(The Institute for AIM Medicine)

前・東京大学医学系研究科教授(~2022年3月)の宮崎 徹先生を代表理事・所長として設立された、血中蛋白質「AIM」に関する研究を総合的かつ集中的に推進しその成果の実用化を加速するための研究機関。2022年発足後、以下の4項目を5年間に達成することを目指している。

  1. 動物用AIM医薬品(ネコ用AIM薬)の承認・上市
  2. ヒト用AIM医薬品の臨床試験の開始
  3. ヒト用サプリ・ペットフードの承認・上市
  4. AIMに基づく診断技術の実用化

宮崎 徹先生プロフィール

  • 1986年東京大学医学部医学科卒。医師免許取得し同大附属病院第三内科に入局。熊本大学大学院を経て、92年より仏ルイ・パスツール大学で研究員、95年よりスイス・バーゼル免疫学研究所で主任研究員として研究室を持ち、2000年より米テキサス大学免疫学准教授。06年より東京大学医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学部門・教授。22年より一般社団法人AIM研究所代表理事・所長。AIM研究を綴った一般向けの著書に『ネコが30歳まで生きる日』がある(2021年8月時事通信社より刊行)。

§株式会社エルムスユナイテッド動物病院グループ

MRIやCTを保有し高度医療を行うセンター病院と地域に密着した一次病院の10病院の診療体制のもと、iPS細胞の研究や獣医療DXに取り組む。本社所在は東京都文京区小石川3-30-11 クレール小石川 1階。代表取締役社長は荒川弘之先生。

荒川弘之先生プロフィール

  • 東京大学大学院 農学生命科学研究科(獣医学専攻)卒、博士(獣医学)。1985年4月製薬会社に入社、管理職グループリーダーを経て、2009年より獣医師として動物病院に勤務。現、株式会社エルムスユナイテッド動物病院グループ代表取締役。