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農研機構は、2022年5月16日、豚熱ウイルスの遺伝子解析により、3月に山口県内で確認された野生イノシシ由来のウイルスは、約500km離れた紀伊半島東部で確認されたイノシシに由来するウイルスと最も近縁であったと発表した(農研機構「プレスリリース」)。
2022年3月に山口県内で豚熱に感染した野生イノシシが確認されたが、その周辺では陽性例は確認されていなかった。ウイルスの遺伝子検査で、兵庫県などで見つかっていた感染イノシシに由来するウイルスではなく、2021年5月に約500km離れた紀伊半島東部で見つかった感染イノシシに由来するウイルスと最も近縁であることが分かった。
野生イノシシ間での伝播は、おもに感染イノシシの周辺のイノシシが感染することで起こると考えられる。今回の結果から、長距離伝播が起こった可能性が示された。このような長距離伝播がイノシシの移動やイノシシ間の接触等による感染のみによって起こる可能性は低いと考えられ、豚熱ウイルスが何らかの人の活動を介して遠隔地に持ち込まれた可能性が懸念される。
現在のところ九州ではイノシシの感染は認められていない。今回、遠隔地への伝播が起こった可能性が強く示唆されたことから、さらなる流行の拡大を防止するためには、人為的な要因などによるウイルスの長距離伝播について一層の警戒が求められる。
写真解説
大きい丸と四角は遺伝子解析を行ったウイルスの採材地点を示し、丸が野生イノシシ由来ウイルス、四角が発生農場由来ウイルスを示す。これらのシンボルの色は、遺伝子情報に基づいて全てのウイルスを103グループに分けたときのグループ別に色分けしている。薄い色の小さい丸は、2022年3月までの1年間で検査されたイノシシの採材地点を示し、青丸が検査陰性イノシシ、赤丸が陽性イノシシを示す。赤矢印は2022年3月に山口県で確認された野生イノシシ由来ウイルス。黄色矢印は2021年5月に三重県で確認された野生イノシシ由来ウイルス。