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■国内初のツシマヤマネコの人工授精 アニコムグループが遺伝子検査で協力

2022-03-25 18:22 | 前の記事 | 次の記事

人工授精により誕生したツシマヤマネコ(写真提供:よこはま動物園)

どちらの父親候補が実際の父親かをアニコムの遺伝子検査により解析

アニコム ホールディングス株式会社は、2022年3月24日、2021年3月に国内初となるツシマヤマネコの人工授精に成功した横浜市立よこはま動物園の研究をまとめた論文が学術誌「Animals」に掲載されたと発表した。アニコムグループ会社のアニコム損害保険株式会社およびアニコム先進医療株式会社が、グループが保有する遺伝子検査技術を用いて、この横浜市立よこはま動物園によるツシマヤマネコの人工授精の研究に協力した。

§論文

今回、よこはま動物園では、ホルモン剤で卵巣の状態を受精に適した状態にコントロールした上で、腹腔鏡を使って精子を卵管内に直接注入する「腹腔鏡下卵管内人工授精」という方法で人工授精に成功した。今回の成果は、この手法がツシマヤマネコの人工繁殖に有用である可能性を示すとともに、他の小型ネコ科動物にも応用できる可能性を示した。

ツシマヤマネコの人工授精は、環境省が実施する「ツシマヤマネコ保護増殖事業」に基づき、よこはま動物園がアニコムグループ各社のほか、環境省やツシマヤマネコを飼育する動物園・北海道大学獣医学研究院繁殖学教室・岐阜大学応用生物科学部動物繁殖学研究室の協力を得て研究を進めており、2021年3月18日に国内で初めて同種の赤ちゃんが誕生した。今回成功したツシマヤマネコの人工授精においては、2頭の雄のツシマヤマネコの精子が使用されたが、ツシマヤマネコの遺伝的多様性の低さによって、一般的に使用される遺伝子配列を対象とした検査では父親の特定ができませんでした。そこで同社が保有する先端的な遺伝子分析設備・技術を用いてゲノム全域を詳細に調べることで、精子を使用した2頭の雄のうちどちらが父親かを特定することが可能となった。

ツシマヤマネコの野生下の生息数は現在、100頭弱とされており、絶滅危惧種に指定されている。種の絶滅を回避するためには、繁殖において近交弱勢(近親交配による遺伝的劣化)を防ぎ、遺伝的多様性を保全することが重要とされている。そのため同研究においても新たに生まれたツシマヤマネコの赤ちゃんの父親を特定し、個体の血縁関係を記録することが必要とされていた。