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■組織・器官の透明化法開発 脳の診断法開発へ

2022-01-24 14:38 | 前の記事 | 次の記事

マウス脳の透明化(左:未処理、右:iTOMEI処理)

透明化した脳における神経細胞の蛍光イメージング(神経細胞ごとの配置がわかる)

ゼニゴケの透明化(左:未処理、右:iTOMEI処理)

東京大学らの研究グループが、2022年1月13日、蛍光蛋白質の蛍光強度を維持したまま組織・器官を透明化できる動植物共通の透明化法開発に成功したと発表した。植物と動物の区別なく、組織や器官を透明化できる方法で、従来法より蛍光蛋白質の蛍光強度を維持したままで透明化することに成功した。組織や器官深部の構造を維持したまま細胞を観察することができ、器官形成や組織の成り立ちのメカニズム研究の加速、農作物の品種改良や脳の診断法開発への貢献が期待される。

発表者は以下のメンバー(敬称略)で、この成果は2022年1月10日付けで国際科学雑誌「Communications Biology」のオンライン版に掲載された。論文タイトルは「Improved clearing method contributes to deep imaging of plant organs」。

  • 坂本勇貴(大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻 助教)
  • 酒井友希(神戸大学大学院理学研究科生物学専攻 JSPS特別研究員)
  • 西浜竜一(東京理科大学理工学部応用生物科学科 教授)
  • 佐野良威(研究当時:東京理科大学理工学部応用生物科学科 助教)
  • 古市貞一(東京理科大学理工学部応用生物科学科 嘱託教授)
  • 辻 寛之(横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科・木原生物学研究所 准教授)
  • 河内孝之(京都大学大学院生命科学研究科 教授)
  • 松永幸大(東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻 教授)
  • 研究内容の問合せ先は松永幸大先生
  • E-mail sachi(アットマーク)edu.k.u-tokyo.ac.jp

厚みのある組織や器官の深部を観察するためには、内部での光の反射・散乱・吸収を防ぎ、光の直進性を維持することが大切。生物の組織・器官はさまざまな物質を含むため、そのままの状態で内部構造を知ることは困難である。そこで、組織や器官を光が通過できるように透明化する方法が開発されてきた。ただし、植物と動物では組織や器官に含まれる物質が異なるため、手法も別々であった。

共同研究グループは、動植物共通の組織・器官透明化法iTOMEI (improved Transparent Organ Method for Imaging)の開発に成功した。従来の透明化方法の各ステップを綿密に見直し、改良を実施することで、蛍光蛋白質の蛍光強度を維持したままで、動植物の組織や器官を透明化できるようになった。

この透明化手法の開発により、生物の組織・器官の内部構造を動物・植物を区別することなく研究できるようになり、生物共通の器官形成や組織の成り立ちのメカニズムの理解に貢献することが期待される。