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■アフリカ豚熱ワクチンの開発に向けて 効率よくウイルスを増殖できる細胞株開発

2021-03-22 13:19 | 前の記事 | 次の記事

豚肺胞マクロファージ初代細胞(PAM)とIPKM細胞株におけるASFVの増殖曲線

ASFV感染IPKM細胞株における細胞変性効果、血球吸着反応およびプラーク形成

農研機構は、2021年3月18日、アフリカ豚熱ウイルス(ASFV)の安定した増殖に適し、かつ連続して培養することが可能な、不死化された豚由来の新しい細胞株を開発したと発表した。新開発された細胞株を用いれば、アフリカ豚熱ウイルスの病原性などの生物学的性状を詳細に解析でき、同疾患の診断法の改良やワクチン開発につながる可能性があり、「ワクチンの開発に向けたマイルストーン」と評している。

ASFVは、形態や特性において他に類のない特殊なウイルスで、その起源や生態は多くの謎に包まれ、ワクチンなど有効な予防法や治療法も確立されていない。ASFVは豚やイノシシの体内で、免疫細胞であるマクロファージや単球に感染して増殖する。これまでASFVの実験には豚から採取したマクロファージ初代細胞が用いられてきたが、それは生体外で安定的に培養することができず、実験室内でウイルスを増殖させることが難しい。

農研機構は豚の腎臓から採取したマクロファージを遺伝子操作により不死化し、試験管内で連続して培養することができる細胞株を作出した。この細胞株(IPKM株)はASFVに感染しやすく、細胞内でウイルスを効率良く増殖できる。また、感染したマクロファージの特徴である明瞭な細胞変性効果や赤血球吸着反応を示すことから、マクロファージ初代細胞と同等の性質をもつことが明らかとなった。

この成果によりASFVの病原性などの生物学的性状を詳細に解析することが可能となり、ASFの発症メカニズムの解明や診断法の改良、ワクチンの開発などに役立つものと期待される。有効なワクチンが開発された場合、生体由来の病原体が混入する心配のない安定したASFワクチン製剤の製造にも役立つと考えられる。