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第16回日本獣医内科学アカデミー学術大会(2020年2月21日〜23日、バシフィコ横浜)において、2月22日、獣医臨床寄生虫学研究会は「寄生虫病相談から垣間見た近頃のムシと病気」のテーマで、酪農学園大学 浅川満彦先生による講演会を行った。
浅川先生は衛生的な飼育環境や駆虫薬の汎用により「寄生虫病は終わった…」と言われることもあるが、寄生虫の同定などの相談依頼は減らない現状について、病原体側と人間社会側の2つの要因があると述べ、それを解説した。病原体側の要因として、野生動物を原因とする新興の寄生虫病があること、飼育動物が多様化していることなどをあげた。一方、人間社会側の要因は、研究者の減少(特に医学部系)、育つ環境や教育による博物学的な知識の希薄などをあげた。
偽(疑)寄生虫や寄生虫もどきに翻弄されないためには、多様な動植物の知識を涵養し、想像力を身につけるしかないと述べた。偽寄生虫や寄生虫もどきの例として、コアラの毛についていたコナダニ、ペンギンの口内に付着した淡水魚の吸虫類、水道水にもみられるワムシ、摂食後に排泄されるウマバエの幼虫、コウガイビル、ハリガネムシなどをあげた。
また寄生虫の診断にあたっては形態分類による同定が現在も基盤となっており、1月に上梓した『書き込んで理解する動物の寄生虫病学実習ノート』(https://buneido-shuppan.com/?gloc_id=01001&bkcd=2020010001)を寄生虫同定に役立つ書として紹介した。そして治療の薬剤選択には、寄生虫の系統を確認することが有効だと述べた。
最後に特にエキゾチックアニマルの診療を主とする獣医師に向けて「伴侶動物診療をはるかに超えた、多様な寄生虫へ挑戦する専門家たれ」とエールを送った。