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■薬剤耐性問題に対する農林水産省の取り組み 石橋朋子先生講演

2020-02-20 18:16 | 前の記事 | 次の記事

令和30年度家畜診療等技術全国研究集会の2日目(2020年2月19日)には、石橋朋子先生(農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課)による「薬剤耐性問題と家畜における抗菌剤の慎重使用」をテーマにした講演が行われ、薬剤耐性問題に対する農林水産省の取り組みが解説された。以下、その概要を紹介する。

§普及啓発

まず省庁横断的に取り組んでいる「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」にふれた後、普及啓発活動については、令和元年度に大学への出前講義を行い、学生にこの問題の重要性を伝えたとのことを報告した。今後はこの活動を継続するとともに、獣医師会の協力のもと卒後教育を行っていく予定。NOSAI獣医師の往診車にラッピング広告を貼り、農家に対して抗菌性物質の慎重使用を訴えることも検討しているとのこと。

またテトラサイクリン使用の大幅減少を実現した千葉県農業共済組合連合会紫葉会の取り組みも紹介した(関連 JVMNEWS:薬剤耐性(AMR)対策普及啓発活動表彰 ちばNOSAI連と獣医臨床感染症研究会が受賞(2019-11-15))。

§適正使用・慎重使用

抗菌性飼料添加物として、以下の使用禁止措置を講じてきた。

  • 2017年3月:硫酸コリスチン、バージニアマイシン、タイロシン
  • 2019年12月:テトラサイクリン系

2018年4月にはコリスチンを二次選択薬に指定した。二次選択薬にはその他、フルオロキノロン、第三世代セファロスポリン、15員環マクロライドがある(https://www.maff.go.jp/nval/yakuzai/yakuzai_p4.html)。

また、「薬剤感受性ディスクはどこで手に入るのか」という問合せを受けることがあり、その情報をウェブ上で整えたことを報告した。

さらに電子指示書システムの骨格を検討していると述べた。

§効果

大腸菌の薬剤耐性率を指標として効果を判断する。以下の2つが目標となっている。

  1. テトラサイクリン耐性率の低下
  2. 第三世代セファロスポリンとフルオロキノロンに対する低い耐性率の維持

2は維持されているが、1については2020年の目標である33%以下には到達しない水準で横ばいが続いている。そのため、2019年4月に薬剤耐性リスク管理検討会(https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/kentokai.html)を立ち上げ、対策を練り直している。予防的な投与をなくしていくことを視野に入れて議論されている。