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公益社団法人日本医師会と公益社団法人日本獣医師会は、2019年11月25日、日本医師会館大講堂にて第10回連携シンポジウムを開催した。今回のテーマは「“One Health” 時代を迎えた薬剤耐性対策」。昨年同様、薬剤耐性問題を取り上げた。
第1部では医師・獣医師から以下の基調講演が行われた。
- 「医師側からの提言-AMR時代に求められる感染症診療」
- 舘田一博先生(東邦大学)
- 「獣医師側からの提言-One Health時代を迎えた抗菌薬の慎重使用」
- 田村 豊先生(酪農学園大学)
続く第2部では以下の事例紹介が行われた。
- 「乳汁検査により耐性菌が出現した農場におけるテトラサイクリン系抗生物質の使用状況について」
- 岡部卓馬先生(千葉県農業共済組合連合会紫葉会情報技術部会)
- 「静岡県のAMR対策-有志チームから行政部会立ち上げまで」
- 倉井華子先生(静岡県立静岡がんセンター感染症内科)
- 「小動物臨床現場での状況とAMR対策について」
- 村田佳輝先生(獣医臨床感染症研究会 VICA・むらた動物病院)
- 「小児病院における包括的な抗微生物薬適正使用の取組み」
- 福岡かほる先生(東京都立小児総合医療センターASP小委員会)
- 「鶏病研究会における取組み」
- 橋本信一郎先生(鶏病研究会)
- 「養豚場における抗菌剤使用量低減への取組み」
- 小川哲生先生(有限会社タローファーム)
- 「費用と時間をかけずに、県内の感染症情報共有化システムを構築する」
- 久保健児先生(日本赤十字社和歌山医療センター)
- 「2010~2018年に北海道十勝管内で分離された牛由来病原細菌の薬剤耐性調査」
- 中谷敦子先生(北海道十勝家畜保健衛生所)
- 「養豚農家におけるプラスミド性コリスチン耐性遺伝子保有大腸菌の浸潤状況調査結果を用いた薬剤耐性対策の取組み」
- 吉澤頌樹先生(愛媛県南予家畜保健衛生所)
- 「兵庫県の休日夜間急病センターにおける小児に対する経口抗菌薬適正使用に向けた取り組み」
- 明神翔太先生(国立成育医療研究センター感染症科)
抄録を元に、シンポジウムの第1部の内容を紹介する。
舘田一博先生は「耐性菌問題は病院内だけの問題ではなく、市中・環境・社会、そして地球規模で考えなければいけないグローバルな問題であることが明らか」とし、世界が連携・協力して対応していく重要性を述べた。また、抗菌薬の開発に関する提言も行った。日本化学療法学会が中心となって2014年に発表した「新規抗菌薬の開発に向けた6学会提言」(http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/souyakusokusin.html)や日本の抗菌薬開発の歴史・貢献を紹介するとともに、ビジネスとして成り立ちにくくなった抗菌薬開発について、欧米では国家プロジェクトがスタートしていることを紹介した。
次いで田村 豊先生は、コリスチンに耐性を示すプラスミド性コリスチン耐性遺伝子mcr-1を保有する大腸菌が食用動物から検出されていること、欧米で流行する家畜関連型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に注視しなければいけないことを紹介した。伴侶動物医療においては、医療分野で重要視されている基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌やフルオロキノロン耐性菌が分離されていることを紹介した。
このような連携シンポジウムが医療・獣医療の連携推進を加速させ、よりよい対策となることを願うものである。