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第40回動物臨床医学会記念年次大会の市民公開シンポジウムは、2019年11月16日、「高齢化を迎えて、残されたペット達への対応」をテーマに開催された。司会を国立科学博物館 館長の林 良博先生が務め、以下の講演が行われた。
- 終生飼養を厳守するための注意点は-
細井戸大成先生(株式会社ネオベッツ) - 里親になって犬や猫との飼育を始めた時の注意点
太田光明先生(東京農業大学) - 飼育困難となった飼い主と動物への対応
髙島一昭先生(公益財団法人動物臨床医学研究所) - 行政からみた終生飼養下での飼育困難となった動物への対応
長田 啓先生(環境省自然環境局)
髙島一昭先生は公益財団法人動物臨床医学研究所内の「人と動物の会」が運営する動物保護施設Amitié(http://www.haac.or.jp/)の活動紹介をし、その経験を踏まえて、保護動物を譲渡する際の年齢上限の制限(60歳という年齢)はもう少し見直してもよいのではないかと提言した。譲渡先が老齢の方の場合はその家族に譲渡し、飼養は本人にしてもらうなど、細かな対応もできるだろうとのこと。また欧米で行われている安楽死についてもきちんととらえていく必要があると述べた。なおAmitiéでは2013年9月の開園から2019年11月11日までに保健所を通じて432頭を受け入れ、395頭を譲渡したとのこと。安楽死は行っていない。また譲渡後の再受け入れは原則として行っていない。
次いで講演した環境省の長田 啓先生は、譲渡先の年齢の上限規定は自治体によってまちまちであるが、人の健康寿命(女性約75歳、男性約72歳)からペットの平均寿命(15歳とする)を引くと、女性60歳、男性57歳となる。また多頭飼育崩壊の原因は高齢によるものが多いことも事実であり、自治体は高齢者への譲渡に慎重にならざるを得ない状況である。ただ、ペットと入所できる横須賀市の高齢者施設「さくらの里山科」(http://sakura2000.jp/publics/index/8/)やペットの終活を記録していくペットハッピーライフノート(https://pet-happy.jp/shukatsu/post-15624.html)の紹介などを行い、「高齢者とペットを支える支える様々な社会システムの整備は進んでいる」と述べた。環境省でも高齢者のペット飼育について今年度に「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」のパンフレット(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/r0109.html)を作製している。