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■国際的に活躍する獣医師を目指して インターン制度の活用を

2019-09-18 13:46 | 前の記事 | 次の記事

写真 シンポジウムにて。左より乾健二郎先生、浦辺真帆先生、仲川 玲先生、肥田野新先生、塩田佳代子先生、戸上絵理先生、石橋朋子先生、田中亜紀先生、平 知子先生、本田 誠氏、近藤園子先生、芳賀 猛先生、釘田博文先生

写真 シンポジウムを終えて記念撮影

 シンポジウム「世界につながる獣医師のキャリアパス-国際機関での経験を中心に-」が、2019年9月12日、第162回日本獣医学会学術集会にて行われた。このシンポジウムは国際獣疫事務局(OIE)アジア太平洋地域事務所、VPcamp(家畜衛生・公衆衛生獣医師インターンシップ)、日本獣医学会司宰機関の農研機構動物衛生研究部門の共催。

 対象は、海外で働くことに関心のある学生で、参加者は100名ほど。およそ半分が学生であった。司会は近藤園子先生(農林水産省 動物衛生課)、座長は芳賀 猛先生(東京大学)と釘田博文先生(OIEアジア太平洋地域事務所)が務めた。

 釘田先生は冒頭で、「若い獣医師や学生で海外の仕事に関心をもっている人は多いだろうが、現実に働いている人は少ない。国際機関で働いている日本人獣医師の数はOIE本部で1名、WHO(世界保健機関)本部0名、FAO(国連食糧農業機関)は本部1名・ベトナム1名である。また日本にいても検疫業務やグローバル製薬企業、動物園の国際連携など国際的な仕事も増えてきており、国際化というものは避けては通れないものである。海外とつながるということをもっと知ってもらうためにこのシンポジウムを企画した」と述べた。

 発表者は以下の通り(敬称略)。

「国際機関における獣医師の活躍」

  • 乾健二郎(FAO Vietnam)
  • 浦辺真帆(OIEアジア太平洋地域事務所)
  • 仲川 玲(厚生労働省)

「獣医師としての私の海外体験」

  • 肥田野新(Massey University, Postdoctoral Fellow)
  • 塩田佳代子(Yale University, PhD Candidate)
  • 戸上絵理(UC Davis, One Health Fellow)

「世界につながる獣医師のキャリアパス」

  • 石橋朋子(農林水産省消費・安全局)
  • 田中亜紀(日本獣医生命科学大学)
  • 平 知子(JICA九州)
  • 本田 誠(外務省国際機関評価室)

 乾 健二郎先生(1985年東京大学卒業)は、大学院修士課程を修了後にジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)制度によりFAOシリアやイラクでのプロジェクトに従事、その後もJICA(国際協力機構)等のプロジェクトに携わり、現在Laboratory expertとしてFAO Vietnamに勤務している。

 乾先生は「海外で国際機関のプロジェクトを渡り歩くことは、学びの連続で面白いものである。FAOのプロジェクトについては、目的の規模が大きく、多国間・地域にまたがる仕事であり、色々な分野の専門家と接し、学んでいけるところが特長である。自分の弱みと強みが何かを把握し、提案し相手を説得させる能力が必要となる。ただプロジェクトを渡り歩くのは、長期的な身分保障がないことがネックではある。」と述べた。

 浦辺真帆先生(2005年米国ブラウン大学卒業、2010年ペンシルバニア大学獣医学部卒業)は、大学院修了後、米国CDC(疾病対策・予防センター)に勤務。米国スタンフォード大学、WHOベトナム事務所などを経て、現在OIEアジア太平洋地域事務所に勤務。学生時代にWHO西太平洋地域事務所でインターンを経験。

 浦辺先生は「OIEの勤務は、本部、地域事務所、現地事務所のいずれかがある。事務所勤務の仕事の内容はコーディネート的なものが多い。国際機関で働くということは、文化も言語も育った環境も異なる人たちと同じ目標に向かって努力しながら、多くの人に役立てる可能性がある仕事に従事し、かつ仕事のイニシアチブがとれるということである。そのため、専門性や柔軟性が必要となり、また出張や転勤があるため、特に子育て中であれば家族のサポートが必要となる。」と述べた。

 仲川 玲先生(2004年東京農工大学卒業)は、大学卒業後、厚生労働省に勤務。国家公務員の留学制度である人事院行政官長期在外研究員として米国ハーバード公衆衛生大学院に留学。厚生労働省に戻った後、2015年4月~2018年4月にWHOにTechnical Officerとして出向し、ジュネーブ本部の食品安全・人畜共通感染症部に勤務。

 仲川先生は「仕事の内容は微生物のリスク評価で部内の担当は1人のみ。FAO/WHO合同微生物学的リスク評価専門家会議を開催しなければならないが、同僚といえるのはFAO(本部事務所はローマ)にいる担当者1名であった。電話での打ち合わせや報告書を作成する語学力、文章力は必要である。なお、国際機関ではコーデックス委員会がリスク管理を行い、FAO/WHO専門家会議がリスク評価を行っている。まず就職のためのアプローチにおいては、求められている要件を満たしていることを示し、経歴・専門性を明確に履歴書に書く必要がある。上記の英語能力のほか、会議で発言し、論議に貢献するなども必要で、そして自分に自信を持つことも大切だ。」と述べた。

 肥田野 新先生(2010年北海道大学卒業)は、大学卒業後、英国ロンドン大学大学院に進学。その後ニュージーランド・マッセイ大学やカナダ・プリンスエドワードアイランド大学で研究補助員として勤務。日本の動物衛生研究所勤務を経て、現在、マッセイ大学のPostdoctoral Fellow。専門は疫学で、社会学的なアプローチによる感染症対策に取り組んでいる。

 肥田野先生は「明確な目的はなかったが、まずは海外に留学し今に至っている。興味のあることをちょっとやってみるということで、まず一歩を踏み出してみるのでもよい。」と述べた。

 塩田佳代子先生(2012年東京大学卒業)は、大学卒業後、米国エモリー大学大学院進学。日本での学生時代にはOIEアジア太平洋地域事務所で、米国大学院生の時はWHOのタイ事務所でインターンを経験。現在は米国イェール大学のPhD Candidate。

 塩田先生は「CDCのOne Healh Surveillanceシステムデザインの立ち上げにかかわったり、WHOコンサルタントとして中南米10か国の肺炎球菌ワクチンの効果評価など公衆衛生分野の国際プロジェクトを経験している。スキルアップしていくためには挑戦が大事。米国では博士課程の大学院生を一人前として扱うので、活躍の場が広がる。」と述べた。

 戸上絵里先生(2014年日本獣医生命科学大学卒業)は、大学卒業後にはイェール大学公衆衛生大学院に進学。現在はカリフォルニア大学デイビス校獣医学部のOne Health Fellow。日本での学生時代にはOIEアジア太平洋地域事務所で、イェール大学院生の時はWHOのフィージー事務所でインターンを経験。

 戸上先生は「海外で働くことを目指したきっかけは大学に掲示してあったOIEアジア太平洋地域事務所インターンの募集の案内。米国に行ってからは、WHO西太平洋事務局でコンサルタントとして新興感染症サーベイランスや実地疫学養成プロジェクトに携わっている。全米医学アカデミーワンヘルス専門家委員会のスタッフも務めている。WHOへの派遣などについては、指導教員に強引に依頼をしてつかみとったポジション。自分の道を切り開いていくためには、強引さも必要である。国際機関で働くということは、強い目的意識を持ちかつ情熱的な同僚と働くことになり、スケールの大きいやりがいのある仕事ができる。そこに辿り着くためには、インターンシップやボランティア活動、様々なキャリアの人と話すことも重要。また、日本の大学時代に公衆衛生学を必須単位として授業で学んだことが今につながっている。」と述べた。

 石橋朋子先生、田中亜紀先生、平 知子先生、本田 誠氏は送り出す、支援する立場、すなわちキャリアパスとしての役割を担っている立場からの講演を行った。

 農林水産省の石橋朋子先生は、国家公務員の在外研究員制度を紹介。長期の場合は、在外研究員制度は国際環境に対応できる行政官の育成(修士の取得)を目的としている。入省3~8年目の職員が選考対象で、近年は毎年農林水産省から10名程度が派遣されている。獣医師は毎年概ね1名は選ばれている。厚生労働省では5名程度が選ばれ獣医師は1名いるかいないかである(仲川 玲先生発言)。短期は入省7年目以降が対象で、政府機関、研究所、国際機関に6か月または1年間派遣される。給与は支払われ、学費は国費で賄われる。渡航費、日当も支給され待遇はよい。まずは学生時代にインターンを経験することを強く勧めた。その場合、OIEアジア太平洋地域事務所ならば日本にいながら国際機関の体験ができることになる。

 続いて日本獣医生命科学大学の田中亜紀先生が、米国での留学でシェルターメディスンや災害獣医学などに出会い、今の大学教員への道につながったことを述べた。そして「いかなる時も動物福祉を守り、動物の安全を通して人の安全と健康を守る」という使命を語った。

 JICAの平 知子先生はJICAが派遣しているJICA専門家、JICA海外協力隊、国際協力専門員/ジュニア専門員を紹介。JICA海外協力隊は、技術、知識、経験を持ち「開発途上国の人々のために生かしたい」と望む人を募集し、選考後、訓練を経て派遣される。獣医師は現在まで373名(派遣国33か国、出身46都道府県)が協力隊として派遣された。現在は9名の獣医師が、フィリピン、ベトナム、ネパール、サモア、ザンビア、ボリビアに派遣されている。募集期限は間近だが、2019年秋募集ではネパールとボリビアからの要請がある(関連記事https://buneido-shuppan.com/jvmnews/article/jvm20190820-001)。また、JICA職員についても説明。JICAは150の国・地域で事業展開し、拠点は海外約90か所、国内16か所。職員のうち獣医師は10名はいないとのこと。3年毎に人事異動があり、獣医師の専門性とは関係しない職にも就く。

 最後に外務省の本田 誠氏が外務省が実施しているジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)制度を紹介した。同制度は、若手日本人を2年間国際機関に派遣し、知見や経験を深め、正規ポストをつかみ国際機関に定着することを狙いとしており、国際的人材育成を担っている。年に1回選考試験があり、現在は概ね6倍程度の競争率。35歳以下、2年間以上の職歴、志望分野の修士号、将来にわたって国際機関で勤務することの意志などが受験の条件。詳細はhttps://www.mofa-irc.go.jp/

 なお現在国際機関で働く日本人は882名(62%が女性。また約10%が国家公務員としての派遣)で、そのうち417名がJPOのOB・OG。

 このシンポジウムはVPcampのWEBサイト上で(https://www.vetintern.jp/)で動画公開される予定。