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■カタール・ドーハだより 及川正明先生

2019-09-05 11:33 | 前の記事 | 次の記事

馬術競技大会場。馬獣医学センターのすぐ近くにある。

馬の脚浴のコース。馬の足元の靭帯や関節を激しい調教後に痛める可能性があり、その予防に用いられる。

猛禽類はステータスとして王族や富裕層を中心として飼われており、専門の診療所もいくつかある。写真はドーハの古くからある市場の猛禽類売り場にて。

 カタールの首都ドーハにあるカタール財団の馬獣医学センター付属病理部部長の及川正明先生より「たより」が届いた。

 及川先生は同国ハマド大学付属医学生物学研究センターの客員教授も務めている。

 私の勤務するカタール財団は元首の母親であるモーザ王妃が総裁となって運営する非営利の国営財団で、ドーハ郊外に設立されたEducation Cityと呼ばれる学術研究都市を運営しています。イメージとしては日本の筑波学園都市のような地域を想像していただければいいかと思います。世界中から、たとえば英国のUniversity College London (UCL)、フランスからはHEC Paris というビジネススクール、米国からはコーネル大学の医学部、ノースウエスタン大学等々、有名大学の分校や研究機関を招聘し、教育や研究に携わる人は90か国以上に及びともいわれ、正しく多国籍化した学園都市となっています。トップレディであるモーザ王妃自身は教育と研究を重要視して、この面からの国つくりに力を入れています。

 中世には重種馬とともに攻め込んできた十字軍を翻弄したイスラム軍の軽快なアラブ種(英国でつくられたサラブレッド種のルーツでもある)の馬はとても大事にされています。種の保存や長距離競走(耐久レース)のために馬の繁殖の研究は盛んです。

 私は任期なしの契約で勤務していますが、日本と比べ、会議が少なく、規則や制約がとても少ないため、自分で思い描いたように仕事ができるのがとても魅力的です。一方、2022年のサッカーのワールドカップに向けて、街のいたるところでホテル、地下鉄、高速道路などの建設が急ピッチで行われている現在にあります。カタールは私自身もそうでしたが、日本人にとっては余り馴染みがない国だと思います。然し、生活してみますと、旧宗主国であった英国やヨーロッパの雰囲気に満ち、そこにアラビアンナイトの雰囲気がまじりあい、住めば済むほど面白い国だなと気に入っています。

 なお、この10月中旬にはドーハで東京農工大学大学院教授の松田浩珍先生が、医師、獣医師そして医学生物学の研究者や学生に講演する予定となっています。

  • 及川正明先生プロフィール
  •  北里大学畜産学部獣医学科卒業。日本中央競馬会競走馬総合研究所 競走馬診療所に勤務の後、2006年に北里大学獣医学部教授に就任(大動物内科学研究室)。2013年に定年退職された後、米軍三沢空軍基地Misawa Veterinary Clinicに勤務。