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■関東しゃくなげ会 今年のテーマは「AIの活用」

2019-06-24 16:37 | 前の記事 | 次の記事

講演会の様子。右奥は講演中の檜垣彰吾先生、左奥は司会の堀北哲也先生。

 関東しゃくなげ会(佐々木伸雄 会長)第40回研修会が、2019年6月21日、東京の上野 精養軒で行われた。始めに総会が開催され会長や来賓が挨拶、昼食をはさんで、研修会が開かれた。今回の研修会のテーマは「畜産、生産獣医療における人工知能AIの利用について」。堀北哲也先生の司会のもと行われた。

 最初に農研機構動物衛生研究部門の檜垣彰吾先生がAIの総論的なことを述べた。

 「知能」の定義が明確ではないなか、「人工知能とは何か」は定義できないところであるが、IT用語辞典では人工知能は「人間の営みをコンピュータに行わせるための技術または人間の営みを行うことができるコンピュータプログラム」と定義され、「汎用型AI」「特化型AI」の2つに分類される。後者は「限定的な状況と目的においてのみ知的に振舞う」もので、自動運転、チェス、音声認識、医療診断など、現在開発が進められている多くのものや、すでに生活に入りこんでいるAIはこれに当たる。畜産、生産獣医療でのAIもこれに当たる。AIと従来の推測統計学との違いは、大量データを機械学習し、そのモデルから新しいデータに対する予測をすることである。

 檜垣先生は以上のような基礎的なことを解説した後、畜産、生産獣医療の研究動向を、以下の3つに分類して紹介した。

  • 個体情報・施設型センシングデータ
  • 生体センシングデータ
  • 画像・音声データ

 「個体情報・施設型センシングデータ」では、受胎性の予測や乳房炎の検知の研究が行われている。今後は人工授精実施の適否や乳房炎発症リスクの予測の研究も行われていくだろう。ただしすでにクラウドシステムに取り組んでいる企業にデータが集中した場合、そのデータが公表されなければ寡占化が進む可能性もある。

 「生体センシングデータ」では、行動の判別、発情の検知、分娩の予測の研究が行われている。今後は、疾病リスクの予測、社会行動の把握(より精密な管理につながる)、授精適期の予測、on time+での分娩の立会いとさらに立ち会うことの要否の研究へと進展していくだろう。

 「画像・音声データ」では、ボディコンディションスコアの推定や発情の検知の研究が行われている。今後は、疾病リスクの予測や飼養管理の改善、授精適期の予測の研究に発展していくだろう。この分野は、コンピュータ分野の研究者によるものが多いのが現状であるが、今後は畜産分野の研究者の参入が期待できる。ただそれに当たっては、通信インフラの整備が必要となる。

 今後は獣医師にはルーチンな業務が軽減され、稀な状況への対応、背景の変化への対応、ビジョンの設定など獣医師の真価が問われていくだろう。

 檜垣先生の講演についで、より具体的な内容で以下の講演が行われた。

「ウェアラブルセンサを用いた繁殖管理技術」吉岡耕治先生(農研機構動物衛生研究部門)

「搾乳ロボットやセンシング技術など管理自動化設備を活用した疾病管理と獣医療」窪田 力先生(鹿児島大学)

 なお、佐々木伸雄会長は冒頭の挨拶で、「高齢化が進行しているなか、今回のテーマは時宜にかなったものです。AIで全てが解決するわけではないが、取り入れていく部分とそうでない部分の仕分けがこれから行われていくのだろう。想像もつかない技術の出現も期待したい」と述べた。

 しゃくなげ会は全国11ブロックで組織され、産業動物に携わる獣医師の卒後教育の場となっている。その運営は日本全薬工業株式会社がバックアップしている。