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■緊急時のエコーのさらなる活用を FASTに関する講演会

2019-06-20 16:24 | 前の記事 | 次の記事

左より中村篤史先生、瀬良 誠先生、合屋征二郎先生、井坂光宏先生、藤田道郎先生

 春の外科系合同学会で、日本獣医麻酔外科学会、日本循環器学会、日本獣医画像診断学会合同企画として「臨床現場即時検査(Point of Care Testing)について-外傷来院時の腹部胸部のエコー評価-」のテーマで講演会が行われた。座長は藤田道郎先生(日本獣医生命科学大学)と井坂光宏先生(酪農学園大学)。

 発表演題と演者は以下の通り。

  • 「エコーだけで気胸の診断と循環血液量の評価とその治療ができる説」
  • 合屋征二郎先生(日本大学)
  • 「Trauma Ultlasound:Step beyond FAST-FASTだけでは勿体ない? 外傷評価におけるエコーによる気道から循環管理まで-」
  • 瀬良 誠先生(福井県立病院)
  • 「動物救急医療現場における迅速超音波検査の活用法」
  • 中村篤史先生(TRVA夜間救急動物医療センター)

 まず合屋先生が迅速簡易超音波検査(focused assessment with sonography for trauma:FAST)における、プローブの選択や動物の姿勢(仰臥位は血行動態が変わるため禁忌とのこと)、胸部FAST(TFAST)と腹部FAST(SAFAST) のアプローチの仕方など基本的なことを述べた後、鈍的外傷における犬のAFASTをアルゴリズムで解説したり、気胸の早期検出におけるTFASTの有用性、テクニックを紹介した。診断の精度ではCTのほうが優れるが、エコーならば重症度診断もでき緊急時にはとても有効であり、いざという時のためにも「普段から胸部エコーに慣れておくことが大切」と合屋先生は述べた。

 次いで、医師の瀬良先生が講演。治療への時間が短くなることからも、ポイント・オブ・ケア超音波(POCUS)は教育においても臨床現場でもどんどん取り入れられており、FASTは標準的検査になりつつあること、気胸の診断においても感度、特異度ともに90%以上あり、X線検査で除外していくことは過去の診断法となってきたことを述べ、様々な画像やテクニックを紹介した。

 最後に中村先生が多くの救急事例を紹介。緊急患者に対しては表面的な見た目にとらわれず(惑わされがち)、症例のトリアージスクリーニングにFASTを利用することなどを紹介した。超音波検査によりバイタルサインが客観的に評価できると述べ、気胸の検出においてはプローブの位置に注意が必要と指摘した。

 講演後の質疑応答で、瀬良先生は「肺エコーはアーチファクトをみる検査であり、普段設定しているアーチファクトをオフにする機能を止めておく必要がある。また気胸をみる際はリニアプローブを使用している」と述べた。