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■獣医事審議会第1回計画部会が行われる

2019-05-24 17:37 | 前の記事 | 次の記事

会議の冒頭にて。挨拶を述べるのは畜水産安全管理課の石川清康先生

 農林水産省は、2019年5月21日、農林水産省第2特別会議室において「令和元年度獣医事審議会第1回計画部会」を開催した。

 同計画部会では、第3次基本方針に基づく都道府県計画の推進状況、獣医療の体制の整備を図る上での留意点、10年後(2030年度)にあるべき獣医療体制での検討対象となる事項などを具体的に審議していく。今回は専門家(委員のメンバー)から、産業動物獣医師および公務員獣医師の現状や問題点などが発表された。

 まず、大橋邦啓先生(大橋獣医科医院 院長)が「産業動物分野における管理獣医師の役割」を報告した。概要は以下の通り。

  • 産業動物獣医師の専門性(繁殖管理、乳房炎指導、衛生管理、飼料設計など)が高まっており、1人の獣医師が1農場の全てを取り仕切るのではなく、それぞれの専門獣医師が分担して農場をサポートしていく流れとなっている。
  • 皆が計画的に予定をたてた仕事を行うために、管理獣医師は一般診療を行うとともに、専門獣医師たちをコーディネートしていく必要があり、また、家畜保健衛生所と連携をきちんととる必要がある。
  • 獣医師たちの移動距離はどんどん増えており、仕事を行っていく上でのネックとなっている。
  • 産業動物獣医師の今後は、NOSAIの家畜診療所の体制がどのようになっていくかが大きく影響する。

なお大橋邦啓先生は埼玉県上里町で開業し、同県の農場管理獣医師協会の会員。

 次いで岡本真平先生(北海道NOSAI参事)が「NOSAI家畜診療所の運営に関する現状と課題」を報告した。概要は以下の通り。

  • NOSAI家畜診療所は全国231か所、1,746名の獣医師が勤務し、産業動物診療件数の66%を担っている。
  • 獣医師の地域偏在と職域偏在により産業動物診療獣医師が不足し、定年退職者の補充ができない地域もある。
  • 2018年度で女性獣医師は384名(22.4%)と増えている。
  • 2017年度でNOSAI家畜診療所の4割以上が赤字経営となっている。
  • 制度改正による保険と診療の切り離しにも対応していかなくてはならない。
  • 北海道のNOSAI獣医師は約800名と全NOSAI獣医師数の約半分を占める。中途退職者もあり毎年50名ほどを採用していく必要があるが、定員を確保できない地域もでている。

 岡本先生は上記への対応として、次のことを提案した。

  1. 「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」へのNOSAI家畜診療所の役割の明記
  2. 国・都道府県が行うべき獣医師偏在対策の確立
  3. 経営困難地域におけるNOSAI家畜診療所への公的支援の実施

 また、偏在対策については、大学での地域枠の設定などを具体例として述べた。それに対して、「小動物分野を選択する学生もあるだろうし、産業動物分野の担い手確保としては難しのではないか」との意見も出されたが、岡本先生は「難しいであろうが、何かをやっていかねばという思いで提案した」と述べた。

 最後に川手日出子先生(東京都家畜保健衛生所 所長)が、「公務員(農林水産分野)獣医師の現状について」を報告。概要は以下の通り。

  • 家畜保健衛生所は全国に168か所(うち50か所は病性鑑定家畜保健衛生所等)で、獣医師職員の総数は2,087名(うち女性は799名)。2018年4月の新規採用は111名(うち女性は56名)。
  • 業務内容や処遇などの現状を説明。
  • 処遇改善の声に対しては、なかなか都道府県庁に対応してもらえないのが現状。
  • 学生の実習受け入れについて、依頼してくる機関が複数あるため〔公益社団法人中央畜産会、大学、VP Camp (https://www.vetintern.jp/)など〕、簡単ではないだろうが、一本化が望まれる。

 会議当日の資料は公開されている(http://www.maff.go.jp/j/council/zyuizi/keikaku/R1_1.html)。

 次回の計画部会では、小動物診療獣医師や獣医師育成の報告が行われる予定。

 なお、獣医事審議会の目的やメンバーは2019年3月8日のニュース記事に掲載している(https://buneido-shuppan.com/jvmnews/article/jvm20190308-002)。