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第169回 日本獣医学会学術集会が開催されている。大会テーマは「獣医学がつなぐ未来、拓く世界」。司宰機関の日本獣医生命科学大学を会場に、学長の鈴木浩悦先生が大会長を務めている。
まず、学術集会前日の9月7日午前中に映画「なぜ新型ウイルスが次々と世界を襲うのか」を上映した市民公開講座が催され、9月8日からは本大会。584題の一般発表のほか、司宰機関企画シンポジウム「繁殖生理学をとおして未来をみる:基礎×応用×臨床をつないでみた」「犬のがん免疫療法はどこまで進んだのか」「獣医療における愛玩動物看護師の発展像-法施行から5年目を迎えて-」「次世代リーダーによる筋・骨格筋研究のフロンティア」「法獣医学、動き出す:現場から見える新しい獣医学のかたち」「汎用配信機材を用いた産業動物遠隔診療実習」、獣医学教育改革シンポジウム「ワンヘルス時代を支える獣医学分野の疫学教育の在り方」、各分科会のシンポジウム等が行われている。9月11日(金)の午前中をもって閉会となる。
9月9日時点で事前登録、当日登録を合わせると約1,400名の参加となっている。
9月9日の定時総会において、各賞の表彰が行われた。日本獣医学会賞と獣医学奨励賞に選ばれた先生方とテーマは以下の通り。越智賞は今回は推薦がなく、該当者はいなかった。
§日本獣医学会賞
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- 中尾 亮先生(北海道大学大学院獣医学研究院寄生虫学教室/北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所獣医学研究ユニット/北海道大学One Healthリサーチセンター)
- 「マダニ学におけるゲノム情報基盤の確立:宿主系統と微生物叢の多角的な解析に基づく制御戦略の提唱」
- 田村友和先生(九州大学大学院医学研究院ウイルス学分野/北海道大学総合イノベーション創発機構ワクチン開発拠点)
- 「RNAウイルス感染症の制御に資する病態解析、疾病モデル動物開発および診断法に関する研究」
§獣医学奨励賞
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- 伊賀瀬雅也先生(山口大学共同獣医学部獣医臨床病理学研究室/山口大学細胞デザイン医科学研究所/公益財団法人日本小動物医療センター)
- 「犬の腫瘍における免疫チェックポイント阻害薬の臨床応用と腫瘍免疫微小環境における免疫抑制機構の解明」
- 渡邉正輝先生(北里大学獣医学部実験動物学研究室)
- 「実験動物モデルを基盤としたポドサイトを起点とする慢性腎臓病進行機構の統合オミクス解析」
- 南 昌平先生(大阪大学微生物病研究所ウイルス免疫分野)
- 「病原性マダニ媒介レオウイルスの性状解明を目指した分子基盤構築」
- 岩出 進(東京農工大学ワンウェルフェア高等研究所/東京農工大学獣医毒性学研究室)
- 「動物モデルおよび自然発生症例を用いたアミロイドーシスの比較病理学的研究」
受賞者講演から、中尾 亮先生と田村友和先生の功績の一端を紹介する。
中尾先生は大学院生の時から20年間取り組んできたマダニに関する遺伝子解析を基盤として推進してきた研究を紹介した。
ミトコンドリアゲノムの解析手法を開発し、ゲノム解析効率を飛躍的に向上させた。国際コンソーシアムを立ち上げて、その解析手法を用いて、正確な種分類への応用、病原体調査への活用、生物学的特長の解明を世界的に行い、ダニの分類整理などに大きな成果をあげた。
さらにショットガン解析やアンプリコン解析を用いてマダニの微生物叢(マイクロビーム)の全容の解明に取り組んだ。
今後は、効果的な疫学調査、リスク管理法の提案、共生・拮抗関係に着目した制御法の開発を行っていく。
田村先生は、デング熱、ジカウイルス感染症、COVID-19、鳥インフルエンザ、豚熱など、地球規模で家畜や公衆衛生に脅威を及ぼすものの多くはRNAウイルスが原因となっており、その制圧には「知る-病態解明」「制御する-疾病モデルの開発」「見つける-診断法」が重要であるとし、その研究の取組みを紹介した。
豚熱の弱毒生ワクチン株GPE-の病原性を規定する因子を発見し、不明であった弱毒化の分子基盤を解明した。次世代型ワクチンの開発に貢献できる発見である。
また、プラス鎖RNAウイルスの人工合成技術を刷新し、汎用化、高速化した手法を編み出した。それはCOVID-19の流行変異株の性状解析に重要な役割を果たした。さらに改良型ヒト化マウスの開発で、デング熱やCOVID-19の病態の解明に貢献した。
「ウイルスを見たい」という思いで、光るウイルス、光る蛋白質の開発に取組み、新しい超小型発光レポーターをもつ組換えウイルスを作製した。それはワクチン株と野外株の区別にも使用でき、感染動態の可視化にもつながる研究である。
次回、第170回 日本獣医学会学術集会は、2027年9月15日(水)~9月17日(金)に岩手大学のキャンパスで開催される。

