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■新刊 カムイのフクロウ シマフクロウを追う

2026-05-14 15:59 掲載 | 前の記事

『カムイのフクロウ シマフクロウを追う』

本書は北海学園大学工学部教授で鳥類生態学が専門の著者が、北海道大学大学院生時代の1987年から取り組んでいるシマフクロウの研究、観察を中心に生態や保護事業などがまとめられている。

第3章で述べられる36年間にわたる巣箱内の観察の話はとても読ませる。産卵、抱卵、ヒナの成長、巣立ち、親とヒナの関係、ヒナの兄弟姉妹殺し、繁殖に不馴れな雄の様子などが紹介される。餌の記載も詳細であり、餌をちぎってヒナに与える様子が目に浮かんでくるような描写である。

時折、他のフクロウ類や猛禽類と比較が述べられており、シマフクロウの特徴がよくわかる。

第4章の親子、親族をめぐる様々なペアの誕生は、大河小説とも思える展開であり、おもしろい。

第5章では、保護増殖事業の進展について詳細に書かれている。シマフクロウが最も絶滅の危険性が高い「絶滅危惧ⅠA類」から、2026年3月に危険性が下がる「絶滅危惧ⅠB類」になるという成果が出ており、関係者の地道な取り組みには、賛辞を贈りたい。

筆者は第5章の最後に札幌が分布域となるとよいと夢を語り、かつその夢物語は遠すぎる目標ではないと述べている。その札幌の空をシマフクロウが飛ぶ景色をみてみたいものである。

§主構成

第1章 シマフクロウ-島梟

  1. 世界のふくろう
  2. 日本のふくろう
  3. シマフクロウの分布
  4. 北海道のシマフクロウ
  5. シマフクロウの分布変遷

第2章 生態研究と保護の始まり

  1. 生態調査の始まり-食性の今昔
  2. 夜行性ハンター
  3. 近縁種たち
  4. 保護活動の始まり

第3章 繁殖生態

  1. 研究開始
  2. 巣箱設置
  3. 産卵と抱卵
  4. 孵化
  5. ヒナの成長
  6. 巣立ち
  7. 両親の給餌行動
  8. 繁殖期の餌動物

第4章 行動圏・環境利用・出生地からの分散

  1. 独立前
  2. 出生地からの旅立ちと帰還
  3. 独立のとき
  4. 危険な放浪期
  5. 分散遅延
  6. 分散距離と近親交配
  7. 行動圏と環境利用
  8. 営巣木
  9. 生息地の継承

第5章 シマフクロウ保護増殖の歴史と未来

  1. シマフクロウ保護事業の始まり
  2. 生息地保全-保護林制度と種の保存法
  3. 巣箱と補助給餌と足環装着
  4. 事故死を防ぐ
  5. 飼育施設における域外保全
  6. 野生復帰と人為分散
  7. ヒトとの軋轢
  8. 餌付け観光
  9. 隠せない生息地情報
  10. 普及啓発活動
  11. 生息環境復元への市民参加