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「令和7年度家畜診療等技術全国研究集会」(2026年3月2日~3月3日、東京・墨田区曳舟文化センター)では、シンポジウム「農場管理認定獣医師~制度の概要と現場での役割~」が実施された。
まず、伏見啓二先生(公益社団法人日本獣医師会)が「農場管理認定獣医師制度の概要」のテーマで、次いで猪熊 壽先生(東京大学)が「農場管理獣医師の役割」のテーマで講演した。
次に、伏見先生、猪熊先生に加えて小倉大紀先生(北海道農業共済組合 獣医療研修センター)と出口祐一郎先生(宮崎県農業共済組合 生産獣医療センター)の4名が壇上にのぼり、総合討論が行われた。猪熊先生が司会を務めた。まず、共に農場管理認定獣医師となった小倉先生と出口先生が、それぞれの職場での状況などを紹介した。
伏見先生は制度を概説した。「農場管理認定獣医師」は、2025年に初めて認定獣医師が誕生した、できて間もない制度。
獣医師の専門性表示の広告規制緩和が2022年に行われ、初めて獣医師の専門性の表記が認められたが、その表示してよい専門性の基準を明確にするため、公益社団法人日本獣医師会が「認定・専門獣医師協議会」を設置し、協議会に認められた学会の認定医・専門医は専門性を広告に記載することが可能となった。現在、7つの団体が認められているが、そのうちの1つが日本産業動物獣医学会(日本獣医師会)である。
日本産業動物獣医学会が行っている認定医認証が「農場管理認定獣医師」であり、乳牛農場管理認定獣医師、肉牛農場管理認定獣医師、豚農場管理認定獣医師の3つのカテゴリーがある。所定のプログラムをこなし、試験に合格すれば、認定となる。2025年に実施された第1回目の試験で7名の認定獣医師(乳牛5名、肉牛2名)が誕生している(日本獣医師会「トピックス内の資料」)。第2回目の合格発表は2026年2月3日に行われており、乳牛農場管理認定獣医師17名、肉牛農場管理認定獣医師19名、豚農場管理認定獣医師3名が合格している。小倉先生と出口先生は1回目の試験の合格者で、それぞれ、乳牛農場管理認定獣医師、肉牛農場管理認定獣医師となっている。
受験資格の1つは、獣医師会の会員であること。認定期間は5年で、5年経つと更新が必要となる。日本中央競馬会 特別振興資金助成事業の助成で行われおり、研修プログラムの受講は無料で行われている(2026年度までは無料が確定している)。
猪熊先生は、農場管理認定獣医師に求められる役割として、1.農家に対しての飼養衛生管理基準を順守させる指導、2.生産性向上と農場経営の効率化を実施できるコンサルティング業務、3.農場HACCPや畜産GAP導入や普及の指導、4.薬剤耐性菌リスク低減に代表されるワンヘルスの推進、5.アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた家畜の適切な飼養管理の普及の5つをあげ、さらに農場管理認定獣医師の地位向上や制度の戦略的活用(信頼度の向上や指導業務への適切な課金制度など)のためにも認知度をあげる役目があることを付け足した。
小倉先生は、まず研修プログラムの受講において、多くの獣医師が専門性をもっていることにより自身の専門性について改めて考えることになったこと、様々な獣医師と出会ったことが財産になっており、制度をつくった日本獣医師会に感謝していると述べた。そして勤務する北海道農業共済組合 獣医療研修センターでは、研修業務を行っており、その人材育成のことを紹介した。さらに、専門性を生かした「蹄」の事業化にも話題は及んだ。
出口先生は、生産獣医療の契約を推進する立場。その業務や農家を対象とした講演、農場巡回などにおいて、農場管理認定獣医師であることを伝えている。名刺にも載せている。農家は、事故低減指導、繁殖成績改善、哺乳成績改善、哺乳管理指導、子牛発育改善、従業員教育、衛生管理指導など多様なものを求めている。それに対応していくためにも宮崎県農業共済組合は認定獣医師を増やしていく予定(現在、124名の獣医師のうち7名が農場管理認定獣医師)。
会場からは、獣医師会会員のみではなく門戸を広げるべきではないか、自分の専門が農場にとってどのような価値があるのかをはかる上で研修プログラムを受講するだけでも役立った、農場をグローバルにみる視点を持つべきである、など多くの発言があった。また猪熊先生は、認定医にとどまらず、さらに産業動物分野の専門医の資格制度創設に向けても話を展開させた。
日本産業動物獣医学会会長の佐藤 繁先生(岩手大学名誉教授)は、フロアーから「この制度をつくってよかったなと感じている。皆さんが普段取り組んでいる仕事が農場管理である。そこにライセンスが加わり、きちんとした指導で成果をあげる。農家の利益や獣医師の社会的ステータス向上につながっていく」と述べた。
