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■日本学術会議獣医学分科会 SFTSを深掘りしたシンポジウムを行う

2026-02-09 16:22 掲載 | 前の記事 | 次の記事

日本学術会議獣医学分科会(委員長 堀 正敏先生)は、2026年1月16日に公開シンポジウム「One Healthから-SFTS(重症熱性血小板減少症候群)を深掘り/見えない脅威がすぐそばに-マダニ感染症SFTSの真実」をオンラインで行った。

2月4日にはオンデマンド配信が開始された。また、当日は質問が50以上寄せられ、その回答がWebサイトに掲載された。

§オンデマンド配信

  • 配信期間:2026年2月4日~2月23日
  • 対象:制限はない
  • アクセス方法:「日本学術会議 獣医学分科会」のWebサイトに入り、「イベント」をクリックし、「One Health-SFTSシンポジウム」をクリックする。ビデオ視聴申し込み(Google Form)に登録いただくと、オンデマンド配信のURLが提示される。

シンポジウムでは、13名の講演者により、SFTSに関わるテーマが網羅された。司会は髙井伸二先生(北里大学名誉教授)と水谷哲也先生(東京農工大学)が務めた。各講演テーマと講演者は以下の通り。

1.ダニ媒介感染症-病原体(ウイルス・細菌・原虫)を運搬するダニ-

  • マダニの科学 中尾 亮先生(北海道大学)
  • マダニの生物学的位置づけ、約760種がいること、形態、生活環などマダニの基本情報をわかりやすい図を用いて解説。マダニ実験基盤の整備にも話は及ぶ。
  • ダニ媒介感染症 松野啓太先生(北海道大学)
  • マダニ媒介の感染症総論として、マダニを介した動物、人への感染、そして動物と人の共通感染症を引き起こしていることを、具体的な疾患名をあげて解説。エゾウイルスなどについて詳細に語り、未知のマダニ媒介性感染症の危険について警鐘を鳴らした。

2.ヒトのSFTSウイルス感染

  • 日本におけるSFTSの発見とその病態 鈴木忠樹先生(JIHS国立感染症研究所)
  • 山口県での人の初例について解説。病理解析の重要性について触れ、病理が明確になれば、原因不明感染症のコンサルテーションが可能になると述べた。
  • SFTSの臨床的特徴と疫学 西篠政幸先生(札幌市保健福祉局)
  • 実症例の臨床経過を病理所見やウイルスの増殖部位などをまじえて解説。人の患者はダニの活動に合わせて初夏と秋に多いが、1年中みられる。厚生労働省のWebサイト「SFTSについて」にある「SFTS診療の手引き 2025年版」が詳細である。
  • 治療薬開発の現状 谷 英樹先生(富山県衛生研究所)
  • ファビピラビル(「アビガン」)の作用様式、治療効果などを解説。「アビガン」の使用には事前登録が必要である現状にも触れた。
  • ワクチン開発の現状 海老原秀喜先生(JIHS国立感染症研究所)
  • ワクチン開発の可能性について解説。ただし、実用に向けては免疫の壁、数の壁、市場の壁があると述べた。

3.野生動物のSFTSVウイルス感染

  • 野生動物の増加と移動に伴うダニの生息域の拡大 土井寛大先生(森林総合研究所)
  • シカとマダニを関連付けた研究が多数あり、マダニの増加にシカが関わっている。ハクビシンはオポッサム同様にマダニを食べ、マダニを減らしている。SFTSのベクターとされるフトチゲマダニは広がっている。マダニ発生地域の増加について、ペットショップのナマケモノや救護されたミズナギドリから見つかった例を紹介した。
  • SFTS媒介マダニの生息域は何故拡大するのか? 高野 愛先生(山口大学)
  • 日本紅斑熱やSFTSが増加しているが、その要因には、認識の向上、マダニとの接触機会が増えたことが考えられる。道東で実施している野鳥の調査で、マダニ寄生率は右肩上がりとなっている。
  • SFTSの抗体調査:忍び寄るウイルスの浸淫度を知る 前田 健先生(JIHS国立感染症研究所)
  • 近畿・中国地方で人の患者が多く、野生動物の陽性率が、地域リスクの指標となる。シカやイノシシの存在は陽性マダニを増やすことにはなっているが、マダニの増幅動物はタヌキ、アナグマなどの食肉目である。
  • 病原体保有ダニの減少に向けて 横山直明先生(帯広畜産大学)
  • 牧野管理におけるダニ対策について解説。ダニ層の把握、ダニ層にあわせた対策が必要で、柵による野生動物の侵入を防ぐことは効果があると述べた。

4.伴侶動物のSFTSウイルス感染

  • ネコの病態はヒトよりも重症 松鵜 彩先生(日本大学)
  • 2025年末時点におけるSFTSの発生は、猫1,215例、犬82例で、猫は致死率も高い。犬・猫の発生は人の発生地域と重なっている。獣医療従事者も12例が届けられており、咬傷や針刺し事故を防止する体制が必要である。最大の予防策は適正飼育(室内飼育)の徹底であると述べた。
  • ネコとイヌへの実験感染からわかったこと 朴ウンシル先生(JIHS国立感染症研究所)
  • 感染実験の方法、病原性の検証、リスクの評価などを述べた。犬は軽症であり、致死率はゼロであったと述べた。
  • 動物病院の対応 応召義務とリスク回避策 中川清志先生(東京都獣医師会)
  • 東京都獣医師会会員の動物病院での、隔離施設の有無や診療が可能かどうかの実態調査結果を報告。紹介できる診療施設の確保、大学との連携が重要とし、東京都との連携も実現したいと述べた。東京都獣医師会では動画を含む対策マニュアルを制作するなど対策を練っている。

最後に岡林環樹先生(宮崎大学)と前田 健先生(JIHS国立感染症研究所)の座長のもと、総合討論が行われた。その冒頭では、岡林先生が、宮崎県での「SFTSリスク低減を目指したワンヘルスアプローチ」の取り組みを紹介した。人のワクチン開発が重要であるが、ペットのワクチンの開発が、人の感染防止につながるとの話題も出た。