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山口大学は、2026年1月23日、「抗犬PD-1犬化抗体(ca-4F12-E6)」を用いて、進行性の犬口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)を対象とした世界最大規模の獣医師主導臨床研究を実施したと発表した(参照:山口大学「新着ニュース」)。
山口大学共同獣医学部 獣医臨床病理学研究室の水野拓也教授(山口大学細胞デザイン医科学研究所・副所長)および伊賀瀬雅也准教授(山口大学細胞デザイン医科学研究所・所員)と京都動物医療センターの萩森健二獣医師の研究グループは、以前に獣医臨床病理学研究室および日本全薬工業株式会社が樹立した「抗犬PD-1犬化抗体(ca-4F12-E6)」を用いて、進行性の犬口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)を対象とした世界最大規模の獣医師主導臨床研究を実施した。
同研究では、山口大学共同獣医学部附属動物医療センターおよび京都動物医療センターを含む多施設において150頭の犬を登録し、本抗体の有効性と安全性を評価した。その結果、既存の治療法に抵抗性を示す進行がんであるにもかかわらず、16.7%の症例で腫瘍の縮小(奏効)が認められ、一部の症例では長期的な生存が得られた。
さらに、治療効果を予測する「バイオマーカー」の探索を行った。その結果、腫瘍組織のゲノム解析において「マイクロサテライト不安定性(MSI)」が高いという特徴を持つ症例では、生存期間が有意に延長することが判明した。また、治療開始前の血液検査で炎症反応が高い症例は、治療効果が得られにくい傾向があることも分かった。
この研究成果は、犬の免疫療法における科学的根拠(エビデンス)を確立するとともに、治療効果が見込める犬を事前に選別する「個別化医療」への道を拓くもの。
研究成果は、2026年1月23日10時(日本時間)に、がん免疫療法の専門誌である「Journal for ImmunoTherapy of Cancer」に掲載された。
- Caninized PD-1 monoclonal antibody in oral malignant melanoma: Efficacy and exploratory biomarker analysis
- Masaya Igase, Kenji Hagimori, Sakuya Inanaga, Hiroki Mizoguchi, Kazuhito Itamoto, Masashi Sakurai, Tomoki Motegi, Hiroka Yamamoto, Masahiro Kato, Toshinori Shiga, Toshihiro Tsukui, Tetsuya Kobayashi, Takuya Mizuno
- Journal for ImmunoTherapy of Cancer
- 2026年1月23日オンライン公開
・用語「マイクロサテライト不安定性(MSI)」
DNAの複製ミスを修復する機能が低下することで、遺伝子の中に「マイクロサテライト」と呼ばれる繰り返し配列の長さが変わってしまう状態。これが高い(MSI-High)がんは、免疫原性が高く、免疫療法の効果が出やすいことがヒトで知られている。
