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■犬を飼育する児童の幸福度の上昇には細菌叢の変化が関与 麻布大学

2025-12-08 17:31 掲載 | 前の記事 | 次の記事

犬の飼育児童の腸内細菌叢によって児童の社会性が向上し、ウェルビーイングが高まる可能性

麻布大学は、2025年12月4日、獣医学部介在動物学研究室の菊水健史教授らの研究グループによる、犬を飼育する児童の幸福度の上昇には細菌叢の変化が関与するとの研究成果を発表した(参照:麻布大学「プレスリリース」)。思春期児童を対象に、犬の飼育がもたらす心理的効果とその背景となる身体変化を調べ、犬の飼育児童はそうでない児童と比較して、問題行動や非行行動などが低下していたとのこと。

研究グループは、菊水健史教授のほか群馬大学の宮内栄治准教授、東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志センター長、理化学研究所生命医科学研究センターの大野博司チームディレクターらで構成される。

アジア最大規模の東京ティーンコホート(TTC)に参加する思春期児童を対象に行った。

犬の飼育児童の口腔内細菌叢は非飼育児童と異なること、この細菌叢を無菌マウスに投与してマウスの社会性を調べたところ、他個体への関心が高まり、また仲間のマウスの苦痛に対して感受性が高まっていることも分かった。

このことから、犬の飼育は児童の細菌叢を変化させ、その変化した細菌叢が児童の社会性を高めた可能性が示された。

これまでの研究で、特に思春期に犬と過ごす経験は、孤独感を減らし、ウェルビーイング(幸福感)を高めることがわかってきた。しかし、犬の飼育によるウェルビーイングの上昇の背景にある身体変化は明らかにされていなかった。一方、菊水教授らはこれまで犬と生活することで人の腸内細菌叢に変化が生じること、また腸内細菌叢は宿主の脳の働きにも影響し、不安や気分を左右することを明らかにしてきた。

今回の研究では、犬の飼育によって児童の細菌叢に変化が生じ、その細菌叢によって児童の社会性が向上すると仮説を立てた。TTCに参加した13歳児では、犬の飼育児童は問題行動や非行行動、思考の問題などの心理スコアが非飼育児童と比べて低い結果であった。

次に、これらの児童から採取した口腔内細菌叢を無菌マウスに投与。無菌マウスでは児童の細菌叢のみが定着するため、児童の細菌叢の機能を調べることができる。犬を飼育する児童の細菌叢が定着したマウスでは、非飼育児童の細菌叢が定着したマウスと比較して、見知らぬ個体に対する匂いかぎ行動が上昇した。また仲間のマウスを狭いチューブに閉じ込めると、その個体に対する接近と匂いかぎ行動が上昇した。

この仲間のマウスの苦痛に対する社会的な接近は前関心と呼ばれ、共感性の現れと言われていることから、犬の飼育児童のもつ細菌叢には共感性に関わるものが存在する可能性が示された。

また、思春期児童の心理スコアやマウス行動と細菌叢の増幅産物配列変異体(ASV)の検出量との関連解析を実施したところ、レンサ球菌属に属するASVが、思春期児童の心理スコア、またマウスの社会的接近行動と共通して相関することが判明した。これらの結果からレンサ球菌属に属する菌種が社会性に関連する可能性が示された。

研究成果は、2025年12月4日付で国際科学雑誌『iScience』オンライン版に掲載された。