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■シャーシャーとうなる保護猫にどう対処する 保護どうぶつ研究会が開催される

2025-11-28 15:35 掲載 | 前の記事 | 次の記事

第6回「保護どうぶつ研究会」奥は講演者の入交眞巳先生

一般財団法人どうぶつ福祉a-handsは、2025年11月23日、第6回「保護どうぶつ研究会」を東京・ビジョンセンター新宿マインズタワーで開催した。

講師は、東京農工大学ワンウェルフェア高等研究所の入交眞巳先生で、テーマは「保護猫に学ぶ行動学〜臨床現場での事例と解決へのTips〜」。「保護どうぶつ研究会」の会員動物病院の獣医師など、30名ほどが参加した。

入交先生は、保護猫は慣れるのか、猫の性格はどのように決まるのか、キャリーに入れる方法、PVP(pre-visit pharmaceutical)について解説し、さらにトイレの問題、新しい猫の導入、爪とぎなど問題行動にも話は及んだ。具体的でわかりやすい解説であった。

PVPとは動物病院に連れていく前に事前に飲ませておき、動物の不安をやわらげたり解消するための薬。入交先生は、ガバペンチン、トラゾドン(レスリン)について、論文を含めて詳細に紹介した。事前に自宅でテストをし、その効き目が現れる時間帯の来院・受診が奨められるが、「獣医師がPVPを処方してくれない」という飼い主の声があることも紹介した。動物病院側の理解の醸成も必要かもしれない。なお、動物病院に着いてから暴れる場合は、鎮静剤の使用を考慮するべきとのこと。

恐怖体験などにより激しい攻撃行動を発現した猫の話は、その行動の激しさにより飼い主の生活が破綻することもあるとのことで、驚くべきものであった。

なお、入交先生は、問題行動への対処などは、東京農工大学と東京都で作成し公開している「わんにゃん暮らしのアドバイス」に動画を含めて解説を載せていると紹介した。

入交先生の発表に次いで、意見交換会が行われた。シャーシャーとうなったり、パンチをしてくるなど扱いづらい猫への対処を中心に討論が展開した。そういった猫は、自治体の譲渡会では対象とはならない場合が多い。「シャーシャー」は怖がっているサイン、「パンチ」は近寄らないでのサインであり、系統的脱感作で対処していくことになる。ただし、馴化にはとても時間がかかり、気長に「人は嫌なこと、危険なことはしない」とわからせていかなければいけない。動物病院で譲渡会を行っている場合、譲渡できるまでに馴化させるためには、ホームケアしてくれる扱いの上手な方に預けることもよいとの発言もあった。

一般財団法人どうぶつ福祉a-handsの理事長で、司会進行を務めた宮下めぐみ先生も「預かりさんとの連携は重要」と述べた。また宮下先生は「入交先生の講演では、知らないこともたくさんあり勉強になった」と述べ、最後に「今日の話の内容を噛みしめて、また診療に臨みたい」と締めくくった。

研究会の終了後には、参加者たちで発表会場を模様替えし、懇親会が営まれた。

一般財団法人どうぶつ福祉a-handsは、獣医師による犬や猫の保護・譲渡活動の支援のために設立された団体で、全国の協力動物病院のもと、里親募集マッチングサイト運営や保護動物の医療助成などを行っている。「保護どうぶつ研究会」は、情報発信や意見交換を行える場として設けられ、年2回開催されている。