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■WWFジャパン 野生動物カフェの衛生・安全面の実態調査を実施

2025-10-10 19:18 掲載 | 前の記事 | 次の記事

『野生動物との触れ合いの現在地:野生動物を扱うアニマルカフェのリスク緊急評価-ワンヘルスの観点から野生動物との触れ合いを考える-』

展示個体における絶滅危機種の割合

主なハイリスク動物の展示状況と傷害リスクの相関図

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWWFジャパン)は、2025年10月3日、報告書『野生動物との触れ合いの現在地:野生動物を扱うアニマルカフェのリスク緊急評価-ワンヘルスの観点から野生動物との触れ合いを考える-』を発表した(参照:WWFジャパン「WWFの活動トピック」)。北海道大学大学院獣医学研究院の石塚真由美教授らとともに、2025年6月~7月に野生動物との触れ合いを提供する東京近郊のアニマルカフェ(以下、野生動物カフェ)25施設における動物利用や衛生対策に関する実態調査を実施し、その調査結果などをまとめたもの。

野生動物カフェは、野生動物のペット需要やインバウンド需要によりコロナ禍以降も人気を集めている。今回の報告書では、野生動物と一般消費者との接触機会となっている野生動物カフェにおいて、野生動物の保全上のリスクや、人への傷害リスク、感染症リスクが見られることが明らかになった。また、野生動物カフェにおいて、これら3つのリスクへの低減・適応措置が不足している運営上の課題も浮き彫りとなった。

§調査項目

  • 展示されている動物の種類、頭数の確認
  • 保全、傷害、感染症リスクの有無を確認
  • 保全:IUCNの絶滅危機種(CR、EU、VU)やワシントン条約保護種の展示状況の確認
  • 傷害:接触には危険と認識される種の展示と接触方法の実態
  • 感染症:衛生対策および動物から人に伝播する病原体の有無の確認
  • カフェ事業者の法律順守状況の確認

§結果の概要

  • 複数の分類群(哺乳類、鳥類、爬虫類など)を同時に取扱う野生動物カフェは全体の64%。
  • 野生動物カフェで展示されていた個体のうち、IUCNレッドリストで絶滅のおそれがあるとされる(CR、EN、VU)種は31種(15%)、ワシントン条約(CITES)附属書(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)に掲載されているのは、131分類群(1目、3属、127種)(64%)を占めた。
  • 接触には高い危険性が伴うと認識されている動物種を展示していた施設は23施設(92%)、該当する分類群は79分類群(1亜目、2属、76種)(39%)、個体数439頭(26%)にのぼった。
  • 野生動物と接触するにあたり、接触方法と傷害リスクの説明の両方を実施していた施設は12施設(48%)ある一方で、両方とも実施していなかった施設は11施設(44%)であった。
  • 一部の施設から腸管出血性大腸菌(16%)・サルモネラ属菌(8%)・薬剤耐性菌(28%)といった病原性細菌が検出された。
  • 「動物愛護管理法」で求められる事業者の標識掲示をしていたのは約半数(48%)にとどまった。