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■競走馬の「ロドコッカス感染症」に関するタンパク質バイオマーカーを発見 aiwell株式会社

2025-06-17 15:05 掲載 | 前の記事 | 次の記事

aiwell株式会社と住友商事北海道株式会社は、2025年6月13日、競走馬の「ロドコッカス感染症」に関するタンパク質バイオマーカーの発見に成功したと発表した(参照:aiwell株式会社「NEWS」)。aiwell株式会社は、AIを用いたタンパク質の網羅的解析技術「AIプロテオミクス」サービスを提供する東京科学大学(旧東京工業大学)発ベンチャー称号認定企業。

「ロドコッカス感染症」は、特に月齢1~6か月の仔馬に肺炎や腸炎を引き起こす難治性の細菌感染症で、早期診断が難しい上、診断が遅れると死亡率が高くなるため、馬産業の中心にある馬産地の牧場、馬主などにおいて経済的損失が大きな問題となっている。

2025年時点において、競走馬(特にサラブレッド)のロドコッカス感染症に関して確立されたタンパク質バイオマーカーは、ほとんど報告がなく、aiwell株式会社は、発見したタンパク質バイオマーカーを用いて、検査キットの開発や創薬への活用を目指す。

バイオマーカーの同定の概要は以下のとおり。

北海道道内の競走馬生産・育成牧場、医療機関などの協力関係機関より提供されたロドコッカス感染・非感染個体の血清から、aiwell IPAの一連のフローによってバイオマーカーを探索した。すなわち、二次元電気泳動(HP-2DE)によってプロテオーム画像を取得、画像データ解析によってロドコッカス感染で特異的に量的変化がみられるタンパク質バイオマーカーを発見し、質量分析によってタンパク質の種類を同定に成功した(種類は未公表)。また、感染および非感染サンプルのプロテオーム画像はそれぞれ異なる傾向を持つことがPCA(主成分分析)で示され、発見したバイオマーカーの確からしさの裏付けとなった。

編集部補足

ロドコッカス属のうち動物に病原性を示すのはRhodococcus equiのみであり、獣医学では「ロドコッカス・エクイ感染症(症)」と呼ばれる。問題となるのは馬の感染症であるが、豚、イノシシ、牛、羊、犬、猫、人からの菌の分離例もある。

ロドコッカスの専門家である北里大学名誉教授の髙井伸二先生に今回の発表について尋ねたところ次のコメントをいただいた。

ロドコッカス感染症の特異的なバイオマーカー(炎症マーカー)を見つけて、タンパク質を特定したことは、興味深い結果です。問題は、どのステージで、どのように検出できるのかということです。ロドコッカス・エクイ感染症の多くが不顕性感染となりますが、その見分けができているのどうかも気になり、まだ課題はあるのだろうと感じます。今後の研究の進展に期待します。また学会発表や論文発表も待たれます。