JVMNEWSロゴ

HOME >> JVM NEWS 一覧 >> 個別記事

■「東獣災害時互助システム」構築に向けて東京都獣医師会と株式会社VETONSが連携協定 全国に広がることを目指して

2025-06-04 16:34 掲載 | 前の記事 | 次の記事

上野弘道先生(左)と羽田和政氏(右)。締結後の記念撮影にて。

東京都獣医師会の防災のためのシステム概要(締結式配布資料より)。右上が「RIMOT」。スマートフォンでの使い勝手を改善した後、試験運用に供される。

公益社団法人東京都獣医師会(会長 上野弘道先生)と株式会社VETONS(代表取締役 羽田和政氏)は、2025年6月3日、両者の連携および協力による災害時における獣医療支援体制を迅速に実現するために、「獣医療業界における災害互助システム構築に関する協定」を東京都の新青山ビルの会議室で締結した。

同協定の3つの柱は、①ペット防災の推進、②被害状況と支援要請の可視化、③互助体制の整備と獣医療支援の安定化。

「RIMOT」は、元々は株式会社VETONSの関連団体の一般社団法人JPCSが運営する動物病院向けのリモート診療・相談予約システムであった。そのブラウザをベースとして、東京都獣医師会と共同で、災害時の診療継続に必要な、安否確認、情報共有、支援要請などの機能を備えた災害互助支援プラットフォーム「RIMOT」として再開発された。新たな「RIMOT」には東京都獣医師会の会員動物病院を登録し、被災した場合に「SOS」をタッチすると、支援が必要な場所が地図上に表示される。まずは5km圏内の支援可能な動物病院などが協力し、獣医療体制を継続していこうというもの。被害状況が共有され、状況の把握が迅速にできる。遠方からの支援においても判断がつきやすい。

町田支部と八王子支部での試験運用が6月中に開始され、年内の正式な運用を目指す。東京都獣医師会の防災担当顧問の平井潤子先生NPO法人アナイスは、「東京でしっかりと確認作業を行う」と述べ、「RIMOT」の活用を確実なものとしていく。東京都での活用が確定した後、各地域の獣医師会へ導入を呼びかけ、全国規模のネットワーク構築を目指す。

東京都獣医師会ではLINEでの会員ネットワークの構築も行い、発災時の備えを進める。上野会長は、「体制を整えるとともに、互助のための普段からの訓練も実施していく」と防災体制を整えていく決意を語った。

羽田氏はSORA Holdingsを率いており、動物病院向けの雑誌制作などを行う株式会社VETONSはグループ会社の一つ。グループの中核は金沢市にある総合建設業の株式会社家元である。2024年能登半島地震では、発災直後から1か月以上、被災地に救援物資を運び続け、そこでペットの飼い主が困っている様を目の当たりにする。上野先生も能登の救援活動がスムーズにいかない経験を持つ。被災現場でのもどかしさを経験し「何とかしたい」との思いを持った両者がタッグを組んで、システムを作り上げていく。

株式会社VETONSは、避難所情報、自治体連絡先、災害時のペットの安否情報共有機能などを搭載した飼い主向けの防災アプリケーションの開発も進めており、将来的には2つを連動させることも視野にある。平井先生は、「避難所の情報は各自治体ともホームページに掲載してあるが、使いづらいpdfであったり、ペットに関わる情報が不十分なことも多く、その改善のためにも同社の取り組みに期待したい」と後押しする。

協定式に出席した防災を専門とする東京都議の早坂よしひろ氏は、人の医療体制では「災害医療コーディネーター」や「災害薬事コーディネーター」によって発災時の支援体制が構築される。動物医療においてはこれまで十分な対応がされておらず、今回の取り組みはその空白を埋める画期的なものであると、民間主導でのシステム構築を評価する。

上野先生は「獣医療とは、動物の命を守るだけでなく、人の生活や社会の安全を支えるインフラのひとつであるとも言える」と語る。「RIMOT」に全ての動物病院が登録されネットワークが密になれば、より支援体制が強固になることは明白である。そのためにもあまねく獣医師会員となることが望まれる。