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■新刊『外来動物対策のゆくえ 生物多様性保全とニュー・ワイルド論』

2025-01-17 13:43 | 前の記事 | 次の記事

『外来動物対策のゆくえ 生物多様性 生物多様性保全とニュー・ワイルド論』

著者の羽澄俊裕先生は、1983年に創立した野生動物保護管理事務所の設立メンバーの一人で、すでに退職されているが、代表取締役も務めていた。多くの獣医師も所属する同社は、日本の環境行政に多大な貢献をし、環境コンサルタント会社という枠を超えた存在である。その会社を牽引されてきたのが筆者である。学問分野では野生動物保全学を専門とされ、国や自治体の審議委員等を務めている。

第4章で「本書で語ってきたことは私の個人的な自然観がベースになっています」と述べ、その自然観の成り立ちについて少しばかり自嘲されているのだが、フィールド、学問、行政、そして経営と豊富な経験と深い洞察を元に本書はできあがっている。序章を読むだけで教養が深まる気がするという、すごい本である。

本書は外来種の具体例などをあげているが、外来種のことだけを取り上げた内容ではない。外来種問題というのは、自然との向き合い方だということを教えてくれ、生物多様性保全の考え方、外来種容認のニュー・ワイルド論のとらえ方もすっきりと理解できる。

野生動物保全学分野における稀代の論客が、分かりやすい文章で、現在の問題点を理解しやすくまとめた1冊といえる。解決への道筋・考え方も明記してある。

なお、動物愛護が大きく関わるノネコも外来種なのだと気づかされる。筆者は公益社団法人東京都獣医師会が行っている小笠原のノネコ対策の一環でつれてこられたネコを引き取って飼っているそうである。

§目次

  • はじめに
  • 第1章 外来種とはなにか
  • 外来種の起源
  • 生物多様性条約と外来種問題
  • 外来生物法の誕生
  • 第2章 島嶼部の外来動物対策
  • 自然遺産-小笠原諸島
  • 自然遺産-奄美・琉球
  • 普通の島
  • 第3章 本土部の外来動物対策
  • 産業飼育から生まれる問題
  • 趣味の飼育から生まれる問題
  • 第4章 正しい選択
  • ニュー・ワイルド論
  • 二十二世紀の生物多様性を想像する
  • アダプティブな外来動物対策
  • おわりに
  • 参考文献

なお、最後に文永堂出版でも同著者の著作を刊行していることを紹介する。