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農林水産省消費安全局畜水産安全管理課薬剤耐性対策班は、「家畜衛生週報」(No.3827,2024.11.11)で、「令和5年度薬剤耐性に関する認知度調査結果」を報告した。
その概要は以下の通り。
なお、詳細が農林水産省のWebサイトに公開されている(参照:「令和5年度薬剤耐性(AMR)に関する認知度調査調査結果報告書」)。
- 対象:生産者、産業動物臨床獣医師、小動物臨床獣医師、ペットオーナー
- 調査期間:2024年2月5日(月)~3月15日(金)
- 形式:WEBアンケートフォームにて
- 回答数:
- 生産者 238
- 産業動物臨床獣医師 315
- 小動物臨床獣医師 279
- ペットオーナー 1,112
§臨床獣医師への認知度調査結果
「薬剤耐性対策アクションプラン」については「名前だけを知っている」と回答した割合が、産業動物、小動物の両分野とも50%以上。内容の周知が課題。
動物用抗菌性物質製剤の慎重使用については、「健康な家畜への抗菌薬投与を避けること」、「抗菌薬の投与を必要最小限の期間とすること」、「薬剤感受性試験を実施すること」などは産業動物、小動物とも高い認知度。一方、「可能な限り抗菌薬の腸内細菌への暴露が少ないものを選ぶこと」への認知度は40%程度。
抗菌薬の適切な使用を日々の診療で心がけた割合は、両分野とも「61%以上」とする回答が過半数を占めた。
過去1年間で、疾病の発生を減らす目的で、飼養衛生管理の改善やワクチンによる感染症予防を指導した割合は、「61%以上」であると回答した割合は、産業動物臨床獣医師が約38%、小動物臨床獣医師は約60%であった。
過去1年間で、抗菌剤の使用にあたり、薬剤感受性試験を実施した割合は、「0~20%」と回答した割合が両分野とも過半数を超え、その重要性を認識しつつも、日々の診療ではあまり実施されていないことが浮き彫りとなった。
ウイルス感染症と診断したが、動物の所有者/管理者が抗菌薬処方を希望した時の対応については、「説明して処方しない」と回答した割合は、産業動物臨床獣医師が約16%、小動物臨床獣医師で約38%。細菌感染症の二次感染対策としての処方やウイルス感染症と確定診断することが難しいという問題もある。
§生産者への認知度調査結果
「薬剤耐性アクションプラン」について認知度は約26%と低い。
抗菌薬の不適切な使用は、薬剤耐性菌の増加につながることについては認知度は約85%と高い。
飼養環境の改善やワクチンの使用により、病気の発生を予防することが、抗菌薬の使用を減らすということについては、認知度は約92%で、多くの生産者が疾病発生の予防が抗菌薬の使用削減につながることを認識していた。
過去1年間で、疾病の発生を減らすために飼養環境の改善や飼育動物へのワクチン接種を行ったことについては、認知度は約82%であった。
抗菌薬はウイルス感染症に効果がないことについては、認知度は約69%で、過半数の生産者が抗菌薬のターゲットはウイルスではないことを認識していた。
過去1年間で、ウイルス感染症と診断されたが、獣医師に抗菌薬の処方を希望したことがないと回答した割合は、約86%であった。
購入した飼料に添加されている抗菌性飼料添加物への認知度は約60%。すなわち、どのような抗菌性飼料添加物を与えているか、約4割の生産者は認識していないことになる。
§ペットオーナーでの認知度調査結果
「薬剤耐性対策アクションプラン」への認知度は約7%で、とても低い。
薬剤耐性菌が人と家畜の細菌感染症を難しくするということについては、認知度は約47%。
抗菌薬の不適切な使用は、薬剤耐性菌の増加につながるということについては、認知度は約69%。
飼養環境の改善やワクチンの使用により、病気の発生を予防することが、抗菌薬の使用を減らすということについては、認知度は約63%。過去1年間で、疾病の発生を減らすために飼養環境の改善や飼育動物へのワクチン接種を行ったことについては、認知度は約76%。この2つの項目より、多くのペットオーナーが疾病発生の予防のために飼養環境の改善とワクチン接種を実施し、それが抗菌薬の使用削減に貢献していると認識していることがわかった。
抗菌薬はウイルス感染症に効果がないことについては、認知度は約59%。過去1年間で、ウイルス感染症と診断されたが、獣医師に抗菌薬の処方を希望したことがないと回答した割合は約98%。抗菌薬がウイルス感染症に効果がないことを認識しているかどうかに関係なく、ほぼすべてのペットオーナーが処方を希望したことがないことがわかった。