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農林水産省は、2024年10月29日、獣医事審議会第1回計画部会をオンラインで行った(参照:農林水産省Webサイト「獣医事審議会」)。
今回の計画部会の会議の主議題は、獣医事審議会計画部会の所掌事務、獣医事をめぐる情勢、地域における産業動物獣医療提供体制の確認の三つ。
獣医事審議会に設けられている試験部会、計画部会、免許部会の3つの部会のうち、計画部会は、獣医療提供体制整備のための基本方針の策定または変更〔獣医療法第10条第4項〕と臨床研修施設の規定〔獣医師法第16条の2第3項〕を行う。まずその業務内容が確認された。
次いで獣医事をめぐる情勢として、獣医師の活動分野、獣医療の対象となる動物や飼養者の状況、産業動物獣医師の現状、産業動物獣医療提供体制整備のための取組、産業動物獣医師の育成・確保等対策について、資料をまじえ事務局からの説明があった。
次に「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」についての説明が行われた。これは「獣医療法」に基づき10年毎に策定され、それに基づいて都道府県ごとに産業動物獣医療提供体制を整えていく。現在の体制づくりは2020年5月に策定された基本方針に沿っており、4年が経過している。計画部会では中間報告をまとめるとともに、今後、次の基本方針の策定に着手していくことになる。
現在、獣医師は約4万人で、産業動物分野が約2割(家畜衛生分野の公務員を含める)、小動物分野が約4割の構成となっている。
家畜衛生分野の公務員は、1992年度3,740名、2002年度3,669名、2012年度3,444名、2022年度3,311名であり、減少の一途をたどっている。
産業動物臨床獣医師は、1992年度5,364名、2002年度4,590名、2012年度4,366名、2022年度4,460名であり、減少に歯止めがかかっている。
女性獣医師は約36%で、若い世代ほど比率は高くなる。獣医系大学の学生では女性は5割を超えている。
委員からは産業動物分野は離職率が高いという印象があり、新卒の対応だけでなく、働きやすい職場づくりへの支援も大切だとの発言があった。事務局の農林水産省も就労後の対策にも取り組んでいきたいと答えた。また学生には1年次に基礎実習として産業動物に触れさせると、その分野の進路を選択することのハードルが下がるとの紹介もあった。宮崎県では公務員、農業共済ともに処遇改善に取り組み、働きやすく、給与もよくなっている。公務員の募集に対しては、従来の約10倍の応募数になっているとのこと。また、首都圏の都県も公務員の応募者は多いとのこと。
対策としてデジタル技術を活用した遠隔診療の導入推進、離職した女性獣医師等の復職や他分野から産業動物分野への転職の円滑化の支援、各県における海外への職員派遣や博士号取得といった成長できる環境づくりなど、優良事例の横展開に取り組んでいる。
「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」に沿って産業動物獣医療提供体制の計画を策定したのは、現在、44道府県。未策定は東京都、三重県(策定中)、大阪府。農林水産省は各自治体にアンケート調査や現地視察を行うことにより、その実態把握につとめている。11月には鹿児島県の現地調査が行われる。
9月1日に委員の改選が行われ、新たに就任した佐伯 潤先生が計画部会長を務めている。計画部会のメンバーは以下の通り(五十音順、敬称略)。
§計画部会委員(16人)
- 石岡克己(日本獣医生命科学大学獣医学部 教授)
- 市川陽一朗(公益社団法人千葉県獣医師会 会長)
- 落合由嗣(日本獣医生命科学大学獣医学部 教授)
- 金子美香子(井の頭自然文化園 園長)
- 上家潤一(麻布大学獣医学部 教授)
- 中島敏行(埼玉県中央家畜保健衛生 所長)
- 福原美千加(有限会社みかん動物病院 代表取締役)
- 佐伯 潤(公益社団法人日本獣医師会 理事)
- 椛木円佳(株式会社マドリン 代表取締役)
- 高橋信雄(アニマルクリニックたかはし 院長)
- 長井伸也(日生研株式会社 代表取締役社長)
- 長岡正喜(学校法人鈴木学園中央調理製菓専門学校静岡校)
- 長田三紀(元 全国地域婦人団体連絡協議会 事務局長)
- 三浦こずえ(東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授)
- 高木 哲(麻布大学獣医学部 教授)
- 山田一孝(麻布大学獣医学部 教授)
§計画部会臨時委員(5人)
- 安齊 了(公益財団法人競走馬理化学研究所 理事長)
- 今井康雄(全農畜産生産部 技術専任次長/家畜衛生研究所 所長)
- 上松瑞穂(宮崎県農業共済組合生産獣医療センター センター長)
- 兼子秀顕(株式会社日本政策金融公庫 農林水産事業本部融資企画部 部長)
- 和田賢二(山形県農業共済組合家畜部 部長)