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■宮崎大学と株式会社AdvanSentinelが渡り鳥飛来湖沼水を用いた鳥インフルエンザウイルス検出手法の確立と社会実装を目指す共同研究を開始

2024-06-10 15:48 | 前の記事 | 次の記事

ドローンによる渡り鳥飛来湖沼からの採水

株式会社AdvanSentinelは、2024年6月7日、渡り鳥が飛来する湖沼の環境水を用いた鳥インフルエンザウイルス検出手法の確立とその社会実装を目指し、宮崎大学と共同研究を開始したと発表した(参照:株式会社AdvanSentinelプレスリリース「宮崎大学と株式会社AdvanSentinelが渡り鳥飛来湖沼水を用いた鳥インフルエンザウイルス検出手法の確立と社会実装を目指す共同研究を開始」)。2023年12月に宮崎大学が実施したドローン採水により得られた環境水から、同社の技術により鳥インフルエンザウイルス遺伝子の検出に成功したことを受けてのこと。

2020~2021年シーズンの全国的な高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の猛威を受けて、宮崎大学産業動物防疫リサーチセンター(CADIC)は翌シーズンから毎年、県内の渡り鳥飛来池において渡り鳥の糞便を採取してHPAIウイルスの保有を調査しており、陽性例が出た場合には県の家畜防疫対策課と情報を共有して養鶏業者に注意を喚起するなど地域に貢献してきた。

しかし、糞便を用いたモニタリング手法は、飛来シーズン早期では採取できる糞便が非常に少ないことが、HPAI早期警戒アラート発出における課題であった。湖沼等の環境水を用いたHPAIモニタリング手法は、それを補完する手法として知られている。飛来シーズン早期でも湖沼では群れをなして遊泳する渡り鳥が確認される。もしHPAIウイルス陽性の個体がいるのであれば、ウイルスは糞便とともに水中に排泄されるため、鳥が群れている場所から採水すればウイルスを検出できるのではないかと着想。しかし多くの場合、採水が困難な箇所で渡り鳥は群れている。そこでCADICでは2023~2024年シーズンにドローンを用いた採水とHPAIウイルスの検出を開始し、糞便サンプリング調査と並行して進めてきた。このときは全国にHPAI発生が少なかったためか、環境水からのHPAIウイルス検出には至らなかった。

AdvanSentinelは下水疫学調査(ウイルス等のモニタリング)を行っており、新型コロナウイルスの流行動態調査においてはその有用性が立証されている。同社の技術であるCOPMAN法(Coagulation and Proteolysis Method using Magnetic Beads for Detection of Nucleic Acids in Wastewater)による超高感度RNA検出法が、環境水からのHPAIウイルス検出の突破口となった。2023年12月に宮崎県下の調整池でドローンにより採水され保存されていたサンプル水から、COPMAN法により鳥インフルエンザウイルス遺伝子(MおよびH5)の検出に成功した。

この結果を受けて、宮崎大学CADICとAdvanSentinelは、環境水からHPAIウイルスをモニタリングする手法の最適化とモニタリングデータのHPAI対策への有用性の検証について、共同研究を6月から開始した。

§共同研究の概要

  • 研究題目:渡り鳥飛来湖沼水を用いた鳥インフルエンザウイルス検出手法の確立とその実用化に関する研究
  • 研究実施場所:宮崎大学産業動物防疫リサーチセンター(木花キャンパス)、株式会社AdvanSentinel
  • 研究期間:2024年6月1日~2025年5月31日
  • 研究内容:
    • ドローン等による湖沼水サンプリング手法や、鳥インフルエンザウイルス濃縮・検出手法の確立
    • 渡り鳥飛来湖沼における鳥インフルエンザウイルスの長期間モニタリングデータの取得
    • 宮崎県および養鶏事業関係者の高病原性鳥インフルエンザウイルス対策に対する本研究データに基づく早期警戒アラートの有用性の検証
  • 研究の統括:
  •  宮崎大学産業動物防疫リサーチセンター(農学部獣医学科教授) 山田健太郎先生
  •  AdvanSentinel 代表取締役社長 古賀正敏氏