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■養豚場からの抗菌性物質の環境排出低減には汚水処理や堆肥化

2024-02-05 16:47 | 前の記事 | 次の記事

養豚場からの抗菌性物質の環境排出。ふんや尿を介して排出された抗菌性物質は汚水処理や堆肥化により除去され、処理水や堆肥に残存する濃度は大きく低減するが、その除去率は排せつ物処理施設の運転条件が影響した。

抗菌性物質の使用中止に伴う残存濃度の継時変化の模式図。処理水や堆肥中の抗菌性物質の残存濃度は、抗菌性物質使用中は汚水や豚ぷん中と比べるとかなり低いが、使用中止後しばらくは濃度が維持され、その後急激に低減した後、緩やかに減少する動態を示した。

リスク比が1以下の処理水の検体数とその割合。細菌の薬剤耐性化とラン藻類などへの生態影響に関するリスクを、処理水中に残存する各抗菌性物質種についてリスク比という手法で評価。それぞれリスクの上段はリスク比が1以下の検体数、下段の括弧付き値は処理水全検体数(29検体)に対するリスク比が1以下の検体の割合を示す。

農研機構は、2024年1月31日、国内養豚場の汚水処理水や堆肥中の抗菌性物質の残存実態と動態を明らかにしたと発表した(参照:農研機構プレスリリース)。研究担当は動物衛生研究部門 衛生管理研究領域 グループ長補佐 グルゲ キールティ シリ先生と特別研究員 渡部真文先生。

排出された抗菌性物質は環境中で細菌を耐性化し、結果として人や家畜の薬剤耐性問題に関与するため、「ワンヘルス」の観点から重要な課題。汚水処理や堆肥化を行うことで抗菌性物質の残存濃度は減少するものの、その使用量や処理施設の運転状況により、処理水や堆肥中を介した環境排出リスクの度合いに差がみられた。

同成果は、情報が断片的だった養豚場から環境への抗菌性物質の排出実態を解明し、環境中細菌の薬剤耐性化や生態系へのリスクを評価したもので、薬剤耐性問題に対し、関係機関が対策を考える際の基礎情報となる。

研究グループでは、抗菌性物質の除去(加えて、薬剤耐性菌や薬剤耐性遺伝子など環境中で病原性細菌の耐性化に繋がる他の因子の除去)も目的とした家畜排せつ物処理の条件確立や技術開発を進めていくとのこと。

発表論文