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■宮崎大学が「簡易迅速微量採血器具の開発」など獣医学分野の研究業績をアピール アグリビジネス創出フェア出展

2024-01-29 16:10 | 前の記事 | 次の記事

簡易迅速微量採血器具

“母子牛手帳”

アグリビジネス創出フェアの宮崎大学のブース

宮崎大学は、農林水産省が主催するアグリビジネス創出フェア(2023年11月20日~22日、東京ビッグサイト)に出展した。同フェアは、農林水産・食品分野などの最新の研究成果を展示やプレゼンテーションなどで紹介し、研究機関同士や研究機関と事業者との連携を促す場として毎年開催されており、ビジネスマッチングの場として、多くの産官学の機関が参加している。

宮崎大学の展示(参照:アグリビジネス創出フェア宮崎大学資料宮崎大学ニュースリリース)は「牛伝染性リンパ腫ウイルスの受託検査の開始」「簡易迅速微量採血器具の開発」「牛個体識別AIを起点とする飼養衛生管理と防疫対策のDX化」「安産のための“母子牛手帳”」など獣医学分野の研究を中心としたものであった。

「牛伝染性リンパ腫ウイルスの受託検査の開始」と「簡易迅速微量採血器具の開発」は、牛伝染性リンパ腫対策の一連の研究であり、産業動物伝染病防疫学研究室の関口 敏先生が研究の中心となっている。2023年にはクラウドファンディングを実施し資金体制を整えている。

牛伝染性リンパ腫ウイルスの受託検査は、宮崎県経済農業協同組合連合会との協業で2019年より地域を限定して行ってきたが、2024年1月からは全国を対象に受付が開始される。牛伝染性リンパ腫デジタルPCR検査と牛伝染性リンパ腫抵抗性遺伝子型検査があり、いずれも1検体あたり1,200円(税抜き)〔社会情勢により変動の可能性あり〕。検体搬入日から7日以内(土日、祝日を含まない)に結果が通知される。

簡易迅速微量採血器具は試作が完成している。穿刺から採血までワンステップで完結し、動物の皮膚の表面に近い毛細血管から少量の血液のみを吸着剤に採取する。コンパクトで特別に技術なしで採血ができ、一瞬で作業が終わるため動物への負担は少ない。特許申請も出願済み。関口先生は会場で同器具に関するセミナーも行い、企業への提携などを探った。

「安産のための“母子牛手帳”」の研究は、産業動物臨床繁殖学研究室の大澤健司先生が中心となっている。肉牛の健診体制を整え、分娩事故の防止や子牛の有病率、死亡率の減少につなげようというもの。健診項目には「子宮頸管組織/粘膜による各種のサイトカイン検査」や「胎子蹄冠幅/母牛骨盤の測定」などもあるが、研究グループではその有用性を実証してきた(下記論文)。科研費や日本中央競馬会特別振興資金助成事業などの資金で研究が進められており、成果の実現が期待される。