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■「ゲノミック評価」の普及が進む 日本胚移植技術研究会大会

2023-11-10 13:32 | 前の記事 | 次の記事

会場となった群馬会館

開会式。壇上は大会長の清水養一先生(群馬県畜産試験場 場長)

開会式で挨拶を述べる会長の小島敏之先生(株式会社AnimoScience)

第7回日本胚移植技術研究会大会が、10月26日午後から27日にかけて、群馬県・群馬会館で行われた。意見交換会を伴う大会は2019年以来で、一般講演の発表数は34題と近年にない数となった。10月25日午後から26日午前中にはET実務者ネットワーク研修会が群馬県庁の会議室で行われており、3日間の参加者は330名に及んだ。

第7回日本胚移植技術研究会大会は、絹川将史先生(一般社団法人家畜改良事業団 家畜改良技術研究所専門役)による特別講演「黒毛和種の雄牛に起因する低受胎DNAマーカーの開発」にはじまり、次いでシンポジウム「ウシのゲノミック評価の活用と今後の展望」が行われた。そして2日間にわたり、一般講演の発表が行われた。

シンポジウム「ウシのゲノミック評価の活用と今後の展望」の発表テーマと発表者は以下の通り。

  • 群馬県におけるゲノミック育種評価を用いた繁殖和牛の改良について
  •  加藤 聡先生(群馬県畜産試験場)
  • 岡山県における和牛雌牛のゲノミック評価
  •  片岡博行先生(岡山県農林水産総合センター)
  • 黒毛和種の生時体重と在胎期間のゲノミック評価について」
  •  荻野 敦先生(一般社団法人家畜改良事業団)
  • 一公立研究機関における乳牛ゲノミック評価の利用状況について
  •  石川 翔先生(兵庫県立農林水産技術総合センター)

加藤 聡先生は群馬県での取り組みを紹介した。群馬県は2022年度で、全国都道府県のおける順位は、豚4位、乳牛5位、採卵鶏7位、肉用牛10位、ブロイラー18位。肉用牛は近年増加し、2023年2月時点の繁殖雌牛頭数は7940頭で全国10位となっている。肉用牛のうち交雑種が44.9%を占め、全国平均の21%を大きく上回っている。

群馬県では2007年から県外優良繁殖雌牛の導入を開始したが、評価が出るまでにはどうしても時間を要してしまう。そこで2015年度に家畜改良事業団と連携しゲノミック評価を導入し、2018年度からは県畜産試験場から受精卵を県内の9つの和牛改良組合に供給する「スーパー黒毛和牛受精卵供給事業」も開始した。県畜産試験場、農家ともにの種雄牛の選抜も進められてきた。

講演後には座長からは、「いち早く取り組みを始め、いち早く成果を出している」と評価された。ゲノミック評価を導入すると遺伝的多様性をいかに残していくのか、農家にどのように理解してもらうかという問題がある。群馬県では、従来からの体型や哺乳能力も選抜に加味しており、また9つの和牛改良組合がそれぞれ独自の改良を行うことで多様性を保つことに努めている。成果を出すことで、農家の理解も得られている。加藤先生は「目指せ、和牛王国群馬!」と講演を締めくくった。