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■コロナ感染の飼い主からペットへの自然感染頻度を調査 アニコム先進医療研究所

2023-10-30 19:14 | 前の記事 | 次の記事

アニコム先進医療研究所株式会社と国立感染症研究所は、2023年10月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した飼い主からペットへの自然感染頻度について両者が共同で調査した結果が、学術誌「viruses」に掲載されたと発表した。アニコムグループが実施した「#StayAnicom」プロジェクトを通じ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者からイヌ・ネコへの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の自然感染頻度についての共同研究を行ったもの。

#StayAnicomプロジェクト」は、アニコム ホールディングス株式会社が行っていたCOVID-19に罹患した飼い主のペットを一時的に預かるプロジェクトで、2021年12月まで行われた。

同研究では初めに、「#StayAnicomプロジェクト」を通じて預かったイヌおよびネコから、real-time RT-PCR法を用いてSARS-CoV-2のウイルスRNAの検出を試みた。その結果、53頭中8頭のイヌ(15.1%)、34頭中5頭のネコ(14.7%)からSARS-CoV-2ウイルスRNAが検出された。ウイルスRNAの排出は最長でイヌにおいて11日間、ネコにおいて15日間、継続して検出された。一方で、これらのペットの臨床症状は、イヌ1頭が軟便、ネコ1頭が鼻水の症状を示しただけであり、この臨床徴候がSARS-CoV-2感染によるものなのかは確認できなかった。

次にSARS-CoV-2陽性だったイヌ7頭およびネコ4頭から血清サンプルを採取し、SARS-CoV-2の中和抗体検査を行った。抗原はWuhan、DeltaおよびOmicron変異体3つを用いた。その結果、イヌにおける中和抗体の保有率は、Wuhan変異体に対しては100%、Delta変異体に対しては83.3%、Omicron変異体に対しては16.7%であった。ネコにおいては抗原Wuhan、DeltaおよびOmicron変異体の3つの亜種全てに対し、中和抗体を持っていた。

最後にイヌ5頭とネコ2頭のSARS-CoV-2の塩基配列の完全長を決定し、実際に感染していたウイルスの種類を分類した結果、イヌにおいてはB.1.1.284およびAY.29、ネコにおいてはB.1.1.214に分類された。

研究結果から、日本ではコロナ禍における感染拡大を通じてこれまで多くのイヌやネコがSARS-CoV-2に感染しており、その一部は臨床症状を示して動物病院に運ばれた可能性がある。したがって、獣医師とその関係者は、罹患したペットからヒトへのSARS-CoV-2の逆感染の可能性に注意する必要があり、飼い主はSARS-CoV-2に感染した際にはペットとの密接な接触を避け、ペットをSARS-CoV-2感染から予防すべきであるという知見が得られた。