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- 林 良博 著
- 四六判・158ページ
- 定価1,540円(本体1,400円+税)
- 2023年4月・株式会社時事通信社出版局 発行
- 出版元Webサイト:https://bookpub.jiji.com/book/b624568.html
本書は東京大学名誉教授・元副学長、国立科学博物館前館長の林 良博先生が、現在の日本での犬の飼育頭数の現状を憂い、分析し、その対処法を述べている書である。なんともインパクトのある書名は脅しではなく、現状からみた現実的な将来像である。なんとかしなければいけない。
この問題についての危機感の度合は各々異なるだろうが、他人事ではない。何が要因なのか、ではどうすればよいのか。本書を読み、共通認識を持ち、そして声を上げる。このタイミングで、見識深く知名度のある林先生が本書を書き上げたことは大いに意味があろう。獣医師には、少なくとも伴侶動物医療に携わる獣医師には必読の書である。
本書の章の大見出しは以下の構成である。
第1章 日本から犬がいなくなる
- 犬との生活が私たちにもたらしてきたもの
- 子どもが犬と戯れることができない国になる
第2章 なぜ犬の飼育頭数が減ってしまうのか
- ブリーダー業界の変化
- ブリーディングのルールの国際比較
第3章 人と犬がともに過ごす豊かな生活のために
- 犬の幸せとはなにか
- 人と犬の暮らしを維持していくために
第1章では、犬と人との関わりから始まり、犬を飼うことの効用を、そして犬の飼育頭数の現状を述べている。「犬と人との関わり」は様々な書物でも紹介されているが、話の展開の仕方や盛り込まれた最新の情報により引き込まれる。林先生の生い立ちも興味深いものであった。
第2章では、犬の飼育頭数の減少が「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正による、ブリーダーをとりまく環境の変化が主だとの話が展開する。国際比較もあり、日本の特殊性も浮かび上がる。
第3章では、犬の特性や犬種のことを述べ、犬と人の関係はどうあるべきなのかを問いかけてくる。そして、犬の飼育頭数減少にはどう対応していくべきかにも話が及ぶ。
オオカミ・犬とトキソプラズマの関係など最新の科学情報や犬の繁殖のことなど獣医学に関わる話題も多い。獣医師への要望も述べてある。
「動物の愛護及び管理に関する法律」は動物の幸せを願って改正されたものである。しかし、その結果が人と犬の暮らしを奪ってしまうのでは、本末転倒となってしまう。また改善していけば良い。まずは本書を手にしていただきたい。
(記:松本 晶)