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■兎出血病の原因ウイルスの遺伝学的特徴を解明 農研機構

2023-09-11 12:35 | 前の記事 | 次の記事

2000~2020年までの兎出血病6発生例より検出されたウイルスの遺伝学的特徴

農研機構は、2023年9月6日、兎出血病の原因ウイルスの遺伝学的特徴を解明したと発表した。2019年に国内で17年ぶりに発生したウサギの急性感染症である兎出血病について、2000年から2020年の間に発生した6例由来の検体を用いて原因ウイルスの全ゲノム解析を行い、同疾患の国内発生は海外流行株の複数回の侵入が要因である可能性を明らかにした。さらに、2019年から2020年にかけて関東地方で発生した3例由来のウイルスゲノム配列が互いに非常に類似していることを明らかにした(参照:農研機構プレスリリース「2000-2020年に国内で発生した兎出血病の原因ウイルスの遺伝学的特徴を解明)。

  • 発表論文
  • Tanikawa T, Watanabe S, Mikami O, Miyazaki A.
  • Genetics of the rabbit haemorrhagic disease virus strains responsible for rabbit haemorrhagic disease outbreaks in Japan between 2000 and 2020.
  • J Gen Virol.2023 May;104(5).doi:10.1099/jgv.0.001846.

兎出血病は、致死率が非常に高いウサギの急性感染症で、兎出血病ウイルスが原因。従来の被害は8週以上の家兎が中心であったが、2010年にフランスで、若齢の家兎や野兎でも発症する新たな変異ウイルスが出現した。現在、この変異型のウイルスは急速に世界各国にまん延し、家兎の被害だけではなく、野兎の個体数減少による生態系への影響も懸念されている。

国内では、1994年に初めて疑い事例が確認され、1998年に「家畜伝染病予防法」に基づく届出伝染病に指定された。2000年と2002年にそれぞれ1例ずつ発生したが、その後17年間発生はなかった。しかし、2019年から2020年にかけて計9例発生し、国内で初めてとなる流行が確認された。

農研機構では、発生要因を理解し今後の対策に資するために、2000年東京都、2002年北海道、2019年愛媛県、2019年茨城県、2020年栃木県および2020年千葉県の計6発生例より採取した検体を用いて原因ウイルスの全ゲノム配列決定と遺伝子解析を行った。その結果、これらの発生には従来型のウイルスが2系統と新たな変異型のウイルスが2系統の少なくとも4系統のウイルスが関与したことが明らかになった。また、これらの系統のウイルスはそれぞれ海外流行株に遺伝学的に近縁であり、そのうち新たな変異型ウイルスの1系統に分類された2019年茨城県、2020年栃木県および2020年千葉県の3発生例で検出された株は互いに非常に近縁であった。

すなわち2000~2020年の国内における兎出血病は、海外から複数回にわたってウイルスが侵入した可能性を示唆する。

2021年以降も国内で散発的に発生しており、ウサギを飼養する施設では衛生管理を日頃から遂行し、人や物、導入ウサギ等を介したウイルス侵入を防止する必要がある。