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■「農林水産研究イノベーション戦略2023」策定

2023-06-20 14:02 | 前の記事 | 次の記事

農林水産省は、2023年6月9日、「農林水産研究イノベーション戦略2023」を策定したと発表した。

同戦略は「食料・農業・農村基本計画」に基づき毎年度策定されており、「みどりの食料システム戦略」の実現に向け、研究開発、労働力人口減少に対応するスマート農林水産業の加速、「持続可能で健康な食」の実現、バイオ市場獲得への貢献の4項目において重点的に行う研究開発の方向性が示された。

§重点的に行う研究開発

  1. 「みどりの食料システム戦略」の実現に向けた研究開発の加速
    • (1)CO2ゼロエミッションの達成に貢献する研究開発
    • (2)化学農薬の使用量の低減に貢献する研究開発
    • (3)化学肥料の使用量の低減に貢献する研究開発
    • (4)生産力の強化に関する研究開発
    • (5)先端技術に対する理解の増進
  2. 労働力人口減少に対応するスマート農林水産業の加速化
    • (1)「スマート農業」の推進
    • (2)「スマート林業」の推進
    • (3)「スマート水産業」の推進
  3. 「持続可能で健康な食」の実現
  4. バイオ市場獲得に貢献する研究開発
    • (1)精密ゲノム編集技術の開発
    • (2)生物機能を活用した高機能バイオ素材の創出
    • (3)革新的動物ワクチンの開発
    • (4)改質リグニンの利活用の拡大研究開発環境の整備

革新的動物ワクチンの開発の詳細は以下の通り。

  • 発生すると家畜の殺処分や移動制限により甚大な損失が生じる豚熱やアフリカ豚熱等の特定家畜伝染病や、畜産の現場で生産性低下の主要な原因となっている呼吸器病や下痢症等の常在疾病への対策は、食料安全保障の観点から重要。家畜用ワクチンは、疾病予防に対する有効性に加え、簡便性、持続性、低コスト化が重要で、ヒトの医療分野とは異なる開発戦略が必要。
  • 我が国では、アフリカ豚熱ウイルスの増殖に適した新たな豚由来細胞株を確立。ゲノム編集技術も利用することで、遺伝子欠損ウイルス株の効率的な作出が可能。この技術的優位性を生かし、世界初のアフリカ豚熱ワクチン実用化に向けて開発を加速することが重要。
  • 動物に共存する微生物等をワクチンベクターとして活用し、各種病原体の抗原遺伝子を任意に挿入可能な人工ベクターに改良することで、当該ベクターを家畜に経口摂取させ、腸管免疫を持続的に誘導させる革新的なワクチン、微生物や昆虫等を用いた人獣共通感染症を含む家畜感染症に対する革新的なワクチンを開発・実用化するとともに、家畜の抗病性育種を推進。
  • 養殖業における人工種苗の普及に対応し、抗菌剤の使用量や薬剤耐性菌の出現率を低減させる効果的な抗菌剤の使用方法を開発するとともに、従来の対策では対応が難しい疾病でも効果が期待できる新規のDNAワクチン等の開発も必要。