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■変形性関節症に伴う痛みを抑える治療薬「ソレンシア(猫用)」「リブレラ(犬用)」国内製造販売承認を取得 ゾエティス・ジャパン

2022-09-14 13:11 | 前の記事 | 次の記事

「ソレンシア(猫用)」「リブレラ(犬用)」

枝村一弥 先生

ゾエティス・ジャパン株式会社は、2022年9月6日、犬・猫の変形性関節症に伴う疼痛の緩和を目的とする動物用医薬品「ソレンシア(猫用)」と「リブレラ(犬用)」の国内製造販売承認を7月19日に取得したことを公表した。

「ソレンシア(猫用)」「リブレラ(犬用)」は、猫および犬の変形性関節症(OA)の痛みにアプローチするものとしては世界初で、唯一の作用機序による抗NGFモノクローナル抗体製剤。NGF(神経成長因子)は慢性疼痛に関与するとされ、両剤はNGFと結合することにより、NGFが関与する疼痛シグナル伝達を妨げ、OAに伴う疼痛の緩和を導く。モノクローナル抗体製剤は非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)と異なる作用機序により、猫や犬の肝臓、腎臓、消化器への負担を最小限に抑える。注射による投与により経口薬と比べて飼い主の負担を減らし、継続的にOAの痛みを緩和できる。

EUではすでに販売され、米国では「ソレンシア(猫用)」が2022年1月に米国食品医薬品局で承認されている。

枝村一弥 教授(日本大学)のコメント

変形性関節症(osteoarthritis;OA)は痛みを伴う疾患で、近年の報告によると、犬の約20~25%、猫の約60~90%にOAが存在することが明らかになっています。しかし、日本では海外とくらべてOAの治療率は非常に低く、動物の痛みを見過ごしているケースが多いのが現状です。特に猫のOAは犬と比べて臨床徴候が分かりにくいため、飼い主さんが気付かないことも多い疾患です。しかしOAに伴う痛みを放置すると、犬や猫の日常動作が制限されるだけではなく、OAが更に悪化する恐れがあるため、早期に痛みを和らげ身体機能を維持・改善することがOA治療の成功の鍵となります。

これまで、犬猫のOAにおける疼痛管理には非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)が用いられてきましたが、とりわけ猫においては有害事象を生じるリスクが少なくなく、また、毎日の経口投与に苦労されている飼い主さんも少なくありません。

そのような中、新たな疼痛管理の薬剤として開発された、フルネベトマブ(猫用 製品名;ソレンシア)、ベジンベトマブ(犬用 製品名;リブレラ)を有効成分とした抗体薬に大きな期待が寄せられています。両剤はNSAIDsとは作用機序が異なるため、肝・腎・胃腸疾患がある動物にも投与ができることに加え、月1回の皮下投与で疼痛を管理することができるため、有効性・安全性・利便性の面から非常に注目されている新薬です。私自身「動物のいたみ研究会」の会長として、動物の痛みからの解放を使命として獣医療に取り組んでおります。犬猫の疼痛管理に新たな選択肢が増えることをとても楽しみにしております。